21年にマンション保険料は最大5割アップ

ところで、こうした懸念のある不動産の価格にはどのような影響があるだろうか。先ほど言った通り、浸水想定区域などを不動産業者側が説明する義務は現状ない。よってこのことが直接不動産価格に反映されたり、金融機関の担保評価に影響を与えているということはない。

しかし、同省が準備している「不動産総合データベース」には、登記情報や都市計画情報・小中学区や上下水道などのインフラ整備状況に加え、災害や浸水可能性などのネガティブ情報が組み込まれる予定で、これが全国で本格稼働された後には、金融機関の担保評価、ひいては不動産の価格査定に影響を与える可能性は高い。

例えば浸水可能性のないところでは住宅ローンの担保評価が100%だが、浸水リスクのあるところでは50%になるといった具合だ。また東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険は2021年に設備の破損や水漏れなどが多発するマンションの保険料を4~5割高くする方針だが、同様に浸水可能性の高い立地においても保険料がアップしてもおかしくはないだろう。

首長のまちづくり計画にかかっている

そもそも都市計画そのものが変更される可能性もある。わが国はこれから本格的な人口・世帯数減少に見舞われ、上下水道などのインフラ維持やゴミ収集・除雪などの行政サービスが非効率極まりないことになってしまう。その分、税金を数倍に上げれば解決はできるが、そんなことは事実上不可能だ。

また市民が災害に見舞われた場合、その被害は甚大であるとともに、行政コストも莫大なものとなる。そこで、都市計画法では街を「人が集まって住むエリア」と「そうでないエリア」に思い切って分断し、あらゆるリスクを分散しているわけだ。

現行の都市計画区域は、すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図る「市街化区域」と、市街化を抑制すべき「市街化調整区域」に分かれている。災害に伴いインフラ・行政サービスが断絶する危険性を考えるなら、リスクのある土地はこの市街化区域から外すべきである。

市街化調整区域では原則として建築物の建築は許されていないが、この範囲を見直せば、地域一帯が浸水想定区域であっても対策を練ることが可能だ。こうした決断は首長が選挙に強いところから始まるだろう。

選挙に弱い首長では、有権者の利害が絡むこうした政策は実行しにくいはずだ。したがって、住まい選びは「首長が選挙に強く、思い切った都市政策を打ち出せるか」も今後の選択肢の一つとなろう。

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