好きを仕事にすれば「老後2000万円不足問題」は攻略できる
グローバルスタンダードの働き方では、組織に所属するスペシャリストは会社の看板を借りた自営業者のようなものだ。その部署に仕事がなくなれば専門性を維持したまま転職するし、フリーになって仕事を続けることもある。これなら定年も、長い人生の中のひとつのイベントにすぎない(アメリカやイギリスでは定年は年齢差別として違法だ)。
それに対して、日本の会社組織では本当の意味でのスペシャリストはほとんどいない。だがこれを悲観するのではなく、逆手に取って何か「スペシャル」なものをつかむことができれば優位に立てる。
自分の「スペシャル」を見つけるには、好きなこと、得意なことに人的資本のすべてを投じなければならない。これが「好きを仕事にする」だが、10年ほど前に提唱したら「そんな甘いことが通用するはずはない」と批判された。
最近になって同じことを言う若い人たちが増えてきたのは、「人生100年時代」を考えればそれ以外に方法がないからだろう。「石の上にも3年」というが、20代前半から50年(半世紀)働く時代がやってくることを考えれば、嫌いな仕事を我慢することなどできるはずはない。好きなこと、得意なことなら生涯現役で続けていくことができるし、老後2000万円不足もこれで解決できるだろう。
何もスペシャルなものがなければ、バックオフィスの仕事を引き受けるのでもいい。そのいちばんの特徴は「責任がない」ことで、マニュアル通りの仕事だから高齢者でもできることはたくさんあるはずだ。「年金で生きていけないのはおかしい」などと言っていないで、「長く働いてゆたかな老後を実現する」ことを考えた方がずっと建設的だろう。