ギリシャは「反EU勢力」が最初に政権を奪った国

EU各国で反EUをうたう急進勢力が台頭したことは間違いないが、その動きにもまた変化が生じているということを、ギリシャの国政は端的に映し出していると言えるのではないだろうか。地中海を隔てたイタリアでもポピュリスト政党である政権与党「五つ星運動」の支持率が低下しているが、この動きも同じ流れにあると言えよう。

中道右派政権が成立することでギリシャに期待されることは、着実な経済改革の実行だ。特にシリザ政権で遅れてしまった国有企業の民営化や国有資産の売却を進めることは、EUとの関係改善を図る上でも有効に働く。国有企業の民営化や国有資産の売却がEUによるこれまでの金融支援の実施条件であったためだ。

国有企業の民営化や国有資産の売却が進めば、GDPの2倍程度で高止まりしている公的債務の削減も進む。そして金利の低下が進めば、消費や建設に追い風が吹く。ギリシャの景気回復が加速すると期待される。とはいえこうしたギリシャの自助努力だけでは限界があることもまた事実である。

求められることはやはりEUのアシストだ。ギリシャ経済を今後も不安定なままで放置させておくことは、EUにとって地政学的にも受け入れられないはずである。欧州で渦巻く反EU運動に対する対応への観点からもギリシャの扱いは重要だ。なぜならギリシャこそ反EUをうたうポピュリスト政党が最初に政権を奪った国だからである。

参院選では与党も野党も「バラマキ政策」のオンパレード

そしてそのポピュリスト政党による政権運営が、結局のところ目立った成果を出すことがなく終焉したのもギリシャである。そうしたポピュリスト政党が昇り沈んだギリシャの経済の再生をうまくアシストすることこそ、欧州で反EU機運を落ち着かせる妙薬に働くのではないだろうかと筆者は考えている。

翻って、日本では7月21日に参院選が行われる。野党勢力は消費増税撤回をはじめ、最低時給引き上げ、低所得者への年金上乗せ、給付金の支給といった公約を掲げる。一方、与党・自民党も、軽減税率の導入や幼児教育無償化、住宅ローン減税の拡充などを主張している。与野党を問わず、バラマキ政策のオンパレードになっている。

日本の財政は火の車である。与党は上げ潮による税収増を財源にすると主張しており、野党は歳出見直しで財源を確保するとしているが、実現可能とはとても考えられない。そうしたバラマキ政策に期待する有権者の投票行動が、ポピュリスト政党の誕生と瓦解を繰り返させていることを、われわれもまたいい加減に気付くべきだろう。

土田 陽介(つちだ・ようすけ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 研究員
1981年生まれ。2005年一橋大学経済学部、06年同大学院経済学研究科修了。浜銀総合研究所を経て、12年三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社。現在、調査部にて欧州経済の分析を担当。
(写真=AFP/時事通信フォト)
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