ギリシャの状況は「民主党の瓦解」とそっくり
国民の不平不満をバラマキ政策で懐柔しようとする「ポピュリスト政党」は、世界中で存在感を高めつつある。しかし、彼らが政権を担っても、喧伝していた政策は実現できず、結局は瓦解することが多い。
日本人であれば、2009年から2012年まで続いた民主党政権を思い浮かべるかもしれない。自民党を破り、政権交代を果たした民主党には、高い期待があった。しかし当初掲げていたマニフェスト(政権公約)はほとんど実現できず、期待は失望に変わった。
筆者の専門である欧州経済に引きつけると、同様のケースといえるのがギリシャだ。
ギリシャで7月7日に総選挙が行われる。直近の政党別支持率調査によると、親EU派の中道右派政党が勝利し政権交代が実現する見込みだ。反緊縮を旗印に民意をつかんだシリザ(SYRIZA:急進左派連合)はめぼしい実績を残せずに政権から退場するが、このことは欧州のポピュリスト政党の限界をよく示している。
「反緊縮」で民意をつかんだが、実際には現実主義に
ギリシャでの総選挙の実施は2015年9月以来だ。直近の政党別支持率調査によると、与党であるシリザが30%程度にとどまる一方で、中道右派で親EU派の新民主主義党(ND)が40%程度で首位に立っている。先の欧州議会選でもNDの得票率が33.1%と首位につけ、シリザは23.8%と2位にとどまった。
こうした傾向は今に始まったものではなく、2016年ごろから顕在化していた。反緊縮を旗印に民意をつかんだシリザであるが、実際の政権運営は現実主義的であり、それが有権者の支持離れにつながったためである。
総選挙のメインシナリオとしては、政権交代が実現し、ND党首のキリアコス・ミツォタキス氏が新首相に就任する展開となるだろう。ND単独では過半数に満たないが、一方で他党との連立を模索しようにも一定の影響力を持つ政党のうち、NDと近いスタンスに立つ政党は「ギリシャの解決策」程度しか存在しない。
仮に極右政党である「黄金の夜明け」を連立に引き入れたとしても、ND首班の連立は議席の過半を得ることができない。むしろ排外主義的な同党を引き入れることで、欧州連合(EU)との関係が緊張することが懸念される。そのためNDは、消去法的に少数政党内閣を選択せざるを得ないと予想される。