「都心部で圏外」になりかねない
「楽天の携帯電話事業参入へのハードルが上がっている。本当に大変だと思う」
そう語るのは、楽天と携帯電話事業で大型提携を発表したKDDIの高橋誠社長だ。
楽天とKDDIは、通信、物流、決済の分野で提携を発表。楽天は携帯電話事業を開始する19年10月から6年間、東京23区、名古屋市、大阪市以外のエリアにおいて、KDDIのネットワークを借りてサービスを提供することになる。
楽天が用意している設備投資額は25年までに6000億円。この金額で全国にネットワークを敷設する計画だ。これは大手3キャリアが1年間に投入している設備投資額と同等で、多くの業界関係者から「金額が少なすぎる」と心配の声が上がっている。
三大都市以外はKDDIからネットワークを借りるものの、都心部の地下鉄などでは「圏外で使えない」ということになりかねないのだ。
もう1つの心配材料が料金プランだ。
高橋社長は「NTTドコモが19年春に料金値下げをするために(端末代金と通信料金を分離する)分離プランを入れると、3キャリアがすべて分離プランになる。(キャリアの通信料金が安く見えるので)楽天は、今の楽天モバイルと同じ料金プランでも、通用しなくなるのではないか」と語る。
今どき、「いつでもどこでも繋がるのが当たり前」となっている中、「都心部で圏外になるスマホ」では、どんなに料金が安くても、契約していくれる人はいないだろう。三木谷社長の手腕が問われそうだ。
なお、楽天に速度調査について、事実関係を問い合わせたところ、「弊社で何か恣意的なことをすることはございません。調査をする時間帯や混み具合により通信速度は異なります」との回答があった。
ジャーナリスト
1998年、日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、月刊誌『日経トレンディ』編集記者に。2003年に独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、テレビ、雑誌で幅広く活躍。