ここ数年で借金が急速に増えている
ここ数年で増え続けている借金も、大きな問題である。
中国の内外債務総規模は、2017年9月末時点で約255兆元(約4412兆円)を上回る。対GDP比は、342.7パーセントという高い数値を記録している。債務の対GDP比は2008年末から救いがたいほど上がり続けているが、300パーセントを上回ったのは2017年が初めてだ(図3参照)。
序章でも触れたように、どの国も毛沢東に金を貸そうとしなかったので、何年も中国は借金がなかった。毛沢東の前には戦争や内乱があり、その時も借金はなかった。しかし2008年終盤に政府が大規模経済対策を発表して以来、誰もが競って借金をする状況が続いている。2008年末からの債務の増加額は、中国GDPのおよそ100パーセントに上り、米国が2008年までの10年に記録した規模の2倍を超えている。日本ほどではないが、ものすごい勢いで借金が増えているのだ。
かつてこれほど大きな借金を抱えた歴史がないので、中国はその処理の仕方を知らない。日本や多くの社会は今も昔も借金を抱えているので経験と知識があるが、中国にはそのノウハウがないのだ。
企業や自治体の借金も膨れ上がる
国家だけではない、企業や自治体の借金も膨れ上がっている。いずれ倒産、破産する企業や都市、地方が出てくるだろう。ところが中国政府は、破産するところが出てきても救済はしないと明言している。皮肉なものだ。彼らは共産主義の国だというのに、日本やアメリカよりもずっと資本主義的である。
中国は、1978年に鄧小平が「我々は何か、新しいことを始めなければいけない」と宣言して以降、ずっと資本主義化の道を歩んできた。この40年でますますオープンな市場になってきている。対して日本やアメリカ、その他いくつかの資本主義国は、銀行の国有化や企業救済など、まるで「社会主義化」したような政策を打ち出している。
1990年代の初め、日本でバブルが弾けた時、政府はどの会社も倒産させまいと奮闘した。その結果、いわゆる「ゾンビ企業」や「ゾンビ銀行」が生まれた。本来なら無能な企業・人材は淘汰され、有能な人材が再建して新しい健全な会社を作り上げるべきところを、日本は逆のことをやってしまった。政府が介入し、有能な人から資産を取り上げ、それを無能な人に渡して「その金で有能な人と競争せよ」と言ったのだ。頭がいい、有能な人から取り上げた金を無駄遣いするゾンビ企業・銀行が、日本にはいまだにはびこっている。過剰な保護政策によって生かされている「生ける屍」とも言える。