これまで非公式に検討されてきた在韓米軍縮小または撤退の方針が、2回目の米朝首脳会談を契機に現実化する可能性について、われわれは十分に想定しておかなければなりません。
トランプ大統領が「終戦宣言」について北朝鮮に安易に妥協することに日本は反対すべきですが、もし大統領がそう決意したなら、それを止めることはできないでしょう。
むしろ、トランプ大統領のシビアなカネ勘定と「自分のことは自分でやれ」という叱咤に応じて、日本が国防体系を抜本的に見直すべきです。もちろん、これには憲法改正も含まれます。さらに、法律でも何でもない「非核三原則」など、早々に捨て去るべきです。
北朝鮮への制裁は効いているか
「北朝鮮が2回目の米朝首脳会談に応じたのは、北朝鮮への制裁が効いているからだ」という見方があります。これはおおむね正しい反面、部分的には間違っています。
北朝鮮は核放棄の行動と引き替えに制裁緩和を求めていますが、これは制裁が厳しく効いているからに他なりません。国連決議に基づく制裁はこれまで10回行われ、そのうち2016年までの7回は効いていないとされます。これらは不法物資のやり取りに対して規制を掛けたに過ぎず、北朝鮮経済の5%程度にダメージを与えただけと推定されるからです。
しかし2017年以降、トランプ政権になってからの制裁は、北朝鮮の商業活動全般を規制対象とするもので、同国経済の3割以上にダメージを与えたと推定されています。石油精製品や産業機械の輸入、車の輸入も全面的に禁止されました。その結果、2018年の北朝鮮の対中輸出は大幅に減少したと見られています。
さらにアメリカ当局は、北朝鮮の海外口座6300万ドル分を凍結しています。2005年のブッシュ政権時代に行われた2500万ドル分の口座凍結を、はるかに上回る規模です。
とはいえ、このような制裁だけで、北朝鮮を追い詰めることはできません。過去、北朝鮮では金日成(キム・イルソン)の死後、90年代後半に200万の国民を飢え死にさせていますが、そのような国難をも「金王朝」体制は生き延びてきました。制裁で首が絞まるのは金一族をはじめとする政権中枢の要人たちではなく、末端の国民です。国民がどれだけ困窮しようとも、上層部の人間たちからすれば「知ったことではない」のです。