今はマンガにとって一番幸運な時代

リプロとの取り組みを始めて以降、ジャンププラス編集部でも、分析結果に興味をもつ編集者が増加している。例えば「アプリの外に作品を波及させるために、あえてコメント欄を閉じてみる」といった実験も行ったが、これは編集部内で議論した中で出てきたアイデアだ。

もともとアンケート結果を重視していたジャンプなので、アンケート結果を分析し、作品にどう反映させるか試行錯誤していた編集者も少なくない。細野氏はそんな背景からも、データを用いた施策が「ある種ジャンプ編集部と相性がいいやり方」だと話す。

「今はマンガにとって一番幸運な時代だと感じています。無料のアプリも含めると、マンガはかつてないほど多くの層の読者に読まれている。ジャンプが600万部以上売れていた時代ですら、今ほどではなかったんじゃないかなと思うんです。だからこそ、ヒットのかたちが見えづらいという側面もあります」

前述のとおり、ジャンププラスでは「ワンピース超えのヒット作を生み出す」という目標があるが、それは単純に部数で超えるという話ではないと語る。

「そもそも今はデジタルで『ワンピースをどう超えるのか』というところにチャレンジできる時代です。そういう意味では編集者としてもやりがいがあるし、面白い時代になってきています。そんな時代を生き抜くためのツールとして、データがより重要になってくるのではないでしょうか」

細野 修平(ほその・しゅうへい)
少年ジャンプ+編集長
2000年、集英社入社。『月刊少年ジャンプ』に配属され、マンガ編集者としてのキャリアを積む。以降、『ジャンプスクエア』を経て、2012年から『週刊少年ジャンプ』に所属。アプリ・マンガ誌『少年ジャンプ+』の立ち上げに関わり、2017年から同誌の編集長を務める。主な担当作品は『テガミバチ』『終わりのセラフ』『DRAGON BALL外伝 転生したらヤムチャだった件』など。
越後 陽介(えちご・ようすけ)
Repro 取締役 CSO
大手コンサルティングファームにて、様々な業種の成長戦略立案、ターンアラウンド戦略立案業務に従事。コンサルティングファーム退職後、自らも事業の立ち上げ、事業投資を行う傍ら、2015年からReproに参画。CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)として、全社戦略の策定を担う。
大崎 真澄(おおさき・ますみ)
ライター
1990年、山口県生まれ。大学休学中に複数のスタートアップでインターンを経験し、Webサービスやスタートアップに一層夢中になる。卒業後はフリーのライターとして、国内のテックトレンドを扱うメディアやベンチャー企業のオウンドメディア・採用広報プロジェクトに携わっている。
(文=大崎真澄、撮影=プレジデントオンライン編集部)
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