『週刊少年ジャンプ』に40年間無休で連載していたマンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。全200巻という前人未踏の記録を打ち立てられたのは、なぜだったのか。そのノウハウを『秋本治の仕事術』(集英社)にまとめたばかりの秋本治氏に聞いた——。(第1回)

両さんとは正反対で、時間にキッチリ

撮影=小野田 陽一
漫画家の秋本治氏

こち亀』の連載が終わった時、みなさんからよく聞かれた質問があります。それは「40年間、よく一度も休まずに続けられましたね。いったいどんな仕事のやり方をしていたのですか?」というものです。

主人公の両さんはいい加減な性格ですから、僕がサボらずにコツコツ書き続けたことが不思議でならないようです。どうやら世間のみなさんは僕に両さんのキャラクターをかぶせているらしい。

こち亀』主人公の両津勘吉。愛称は「両さん」©秋本治・アトリエびーだま/集英社

実際に仕事ぶりをお話しすると、さらに驚かれます。漫画家は朝ゆっくり起きて、あとは終わるまで不眠不休で書き続けるという不規則な生活をしている印象があるかもしれません。でも、僕が机に向かう時間は毎日きっちり朝9時から夜7時まで。アシスタントも含めて残業はなしで、タイムカードで管理しています。昼と夕には1時間ずつの休憩も取りますし、約2週間の夏休みもあります。普通の会社と同じです。

もともとは、こんなにきちんと規則正しく動くタイプではなかったんですよ。子どもの頃は、夏休みの宿題を8月の末になってからやっと手をつけるほう。9月になって学校が始まっても、「授業は木曜日だから、まだ大丈夫」とギリギリまでサボっていました。

漫画家も、その延長でルーズに仕事をしているイメージを持っていました。ところがいざプロになると締め切りがあって、自由気ままにやるのは難しいと思いました。そこでスケジュールを組んで、毎日決まった時間に動くようにしました。やってみると、定時に始めて定時にやめるやり方のほうがやりやすかった。デビュー前に会社勤めしていた経験もあるから、抵抗もなかったです。