ベンチャーと組み、9割の離脱を予測可能に
指標作りを模索するジャンププラスが次に注目したのが、アプリに蓄積された「データ」だった。アプリであれば、ユーザーのアクセスするタイミングや時間、回数、気に入った作品を評価できる「いいジャン!」ボタンの押された数など、膨大なデータを取ることができる。このデータを分析すれば、かつての読者アンケートのように、定性的に人気を評価できるような指標を作れるのではないかと考えたのだ。
この取り組みのパートナーとなったのは、2014年設立のベンチャー企業・Repro(リプロ)だ。同社のアプリ解析・マーケティングツールは世界59カ国、6000以上のアプリへの導入実績を持つ。2018年7月にはAI・機械学習を活用した研究開発チーム「Repro AI Labs」も設立した。もともと集英社内の別媒体のパートナー企業だったリプロにジャンププラス編集部が相談を持ちかけたことで、両社での取り組みがスタートした。
「作品の良しあしありきですが、定量的なデータから読者を増やすノウハウを確立できることがわかってきました。人間ができない部分を機械に任せることで、ある程度の成果を出せます」
そう話すのはリプロでCSOを務める越後陽介氏だ。ジャンプラス編集部とリプロはまず、アプリから離脱しそうな傾向にある(再訪確率が低い)読者をAIで予測し、離脱を防ぐことができるかを実験した。結果としてAIの予測誤差を約10%におさめる、つまり9割近くの離脱を予測できたのだ。
また離脱しそうなユーザーにだけプッシュ通知を送り、有料コンテンツを読むためのポイントを特典として付与することで離脱を防げることもわかったという。
「そもそも人の習慣みたいなものを予測できるのかというのが1つのテーマでした。そこに約9割の予測精度を出せました。また、全員に特典を付与するのではなく、一部の人にだけ付与することで費用対効果が良くなることもわかりました」
「実は全員に特典をバラ撒くと、毎日のようにアプリを使っていた人がアプリを使わなくなるという現象が確認されたんです。特典をバラ撒けばいいというワケではないことが、数字で明らかになりました」(越後氏)