男系男子天皇制維持と側室制度はワンセットだ

男系男子による皇位継承を維持しようと思えば、とにかく天皇に子供をたくさん作っていただくしかない。これは天皇制に限らず、男子相続にこだわる「家」の維持や個人事業継承でも同じである。

特に養子を認めず、縦の血のつながりを絶対とする天皇制においては、天皇の配偶者が多産であることが必要不可欠となる。そうなると必然、複数の配偶者が必要となり、男系男子による皇位継承には側室制度がワンセットとなる。これは否定しがたい事実である。

歴史を振り返ってみても、天皇に限らず、将軍家や男子の相続にこだわる商家などでは、将軍や家長が側室を抱えるのは当然のことであった。

しかし大正天皇は側室を抱えられなかった。以後昭和天皇、今上天皇も同じく一夫一婦である。

奥さんが一人で、男児を必ず産む、ましてや複数の男児を必ず産むことを前提にするなんて無理な話である。僕のところはありがたいことに7人の子供を授かった。それでも男児は3人。もちろん妻は一人だよ!

奥さん一人で、男系男子相続を続けるというのはほんと不可能なことを強いることになる。だからどうしても複数の「奥さん」が必要になる。

ゆえに、男系男子による皇位継承には側室制度がワンセットである。このことをまずは当然の大前提としなければならない。

ところが男系男子による皇位継承を天皇制の核心と位置付ける保守政治家・保守論客に限って、事実婚というものを認めない。側室制度というのはある意味、事実婚制度でもあるのだから、事実婚を認めないということは側室制度を認めないことに等しい。もう完全に矛盾しちゃってる。

もちろん、今の世の中で側室制度を全面的に肯定できる政治家やインテリは皆無だろう。国民感情はもとより、今後即位される天皇陛下も、側室制度は否定されるだろう。だからこそ、側室制度を大前提とする男系男子による天皇制の維持が危うくなっているのに、政治家は天皇制維持のための議論を進めない。

男系男子にこだわる政治家やインテリたちは、天皇制を絶対に維持したいと思っているのか。それとも男系男子が維持できなければ、天皇制がなくなってもいいと考えているのか。

確かに、いわゆる保守政治家や保守論客の中には、さっきも述べたけど天皇制という「制度」だけにこだわる冷徹な者も多く存在し、そこでは陛下の人間性は全く考慮されない。男系男子による天皇制という「制度」を守ることしか考えず、男系男子による天皇制でなければ、守る価値も意味もないと考えている者もいるだろう。そのような者は、場合によっては天皇制はなくなっても仕方がないと考えているのかもしれない。

しかし、これは多くの国民感覚と乖離していると思う。今の国民は、天皇制の「制度」だけに敬慕の念を感じているのではない。あくまでも陛下自身に敬慕の念を感じている。

(略)

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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.135(1月15日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【迫る天皇譲位(2)】自称保守インテリの「空論」にブレーキを! 国民が支持する現在の天皇制をどう維持するか》特集です。

(写真=iStock.com)
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