親から逃げて逃げて逃げ続けた

(写真提供=毎日放送)

1997年、人気歌手のUAと俳優、村上淳の間に生まれた。父も母も家を空けることが多く、おばあちゃん子として育った。9歳の時、両親が離婚。母親に引き取られたが、高校生の時に家を飛び出しカナダへ留学する。母が生きる歌の世界にも、父が魅了された芝居の世界にも嫌悪感を抱いた時期があったという。

【虹郎】「親から逃げて逃げて逃げ続けたダサい時期があって、居場所がなくなっていくんですよね。でも、(今振り返ると)親から逃げていたわけじゃなかったんです。本当は自分から逃げていたんです。弱かったから」

やっと見つけた自分の居場所

迷える青年が選んだ“就職先”は、両親と同じ表現の世界だった。デビュー作は、映画『2つ目の窓』(監督:河瀬直美)。父親役は村上淳が務め、虹郎は別れた両親との関係に葛藤する高校生を演じた。それはまるで虹郎の生い立ちをそのまま映したような映画だった。

【虹郎】「この作品に出るか出ないかの決断は、16歳くらいの僕なりに大きな意味を持つということは考えていました。母親が僕のデビューを最初に反対したわけです。『持続力ないよね、あなた精神的に』って。それは自分もわかってる。言われたら悔しい、図星だし。だから役者を絶対死ぬまで続けるんです」

母が指摘した虹郎の“逃げてばかりの性根”をたたきのめしたのは河瀬監督だった。映画撮影当時のメイキング映像には、虹郎に対する河瀬監督の容赦無い怒号が残されていた。

【河瀬】「なんで1回言われたぐらいでやめるの!」

【河瀬】「なんでそんなに簡単なんやお前は。いつも言いなりか!」

【河瀬】「カメラから逃げるな!」

突き動かされるように演技を続ける虹郎は、やがて俳優としての自分に目覚めていく。そして気づけば4年。撮影現場は、やっと見つけた自分の居場所だった。