IPOを急ぐSBGの姿勢は相当に強かった
孫氏は、アリババのような新興企業を発掘し、それに出資することでグループ全体の競争力を引き上げたい。SBG以外の関連企業の投資能力の向上には、投資に回せる自己資金の確保がどうしても必要だ。
そのため、ソフトバンクの上場が行われた。米中貿易戦争など、世界経済の先行き不透明感が高まってきただけに、IPOを急ぐSBGの姿勢は相当に強かったといえる。そのため、今回のIPOに関して強引、強硬実施といった印象を抱いた市場参加者は少なくなかったようだ。
19日、ソフトバンクの初値は1463円と公開価格(1500円)を下回った。その後、同社の株価は1170円台にまで下落する場面を挟み、1316円で週末を迎えた。この間、株価が公開価格を上回って取引されることはなかった。
通信障害のマグニチュードはあまりに大きかった
株価推移から言えることは、ソフトバンクの経営リスクを考えると、公開価格が高すぎると考える投資家が多かったということだ。そのため、買い注文を売り注文が上回り、株価が下落した。ソフトバンクは市場から厳しい評価を受けた。
まず、12月上旬の通信障害のマグニチュードはあまりに大きかった。その原因は、通信ソフトウェアの有効期限切れだ。これは、同社のシステム管理体制の甘さを露呈した。同社は原因の特定に2時間以上を要し、通信の復旧には4時間程度の時間がかかった。その間、国内を中心に人々のビジネス、日常生活に大きな混乱が生じたことは言うまでもない。
この通信障害の発生は、基本的なシステム管理体制の不備にあると指摘する専門家もいる。そうした考えを基に、ソフトバンクの業務監査体制を含め、ガバナンスが十分ではないと考える市場参加者は増えた。IPOが延期されるだろうと真剣に考える機関投資家もいた。
“ペイペイ”の不正請求被害なども発覚
また、ソフトバンクの収益性悪化への懸念も高まっている。携帯電話大手企業の中で、ソフトバンクは唯一、中国ファーウェイ社製の基地局を採用してきた。米国を中心とするファーウェイ製品の排除を受けて、ソフトバンクは欧米企業の基地局製品への取り換えを進める予定だ。それにはかなりのコストがかかる。
特に、政府の要請で携帯電話料金が引き下げられる中、ソフトバンクが収益性を維持できるかは不透明だ。
このように考えると、経営管理体制と収益の両面でソフトバンクの経営リスクは上昇している。モバイル決済アプリである“ペイペイ”の不正請求被害なども発覚している。当面、同社株は不安定に推移する可能性がある。