SBGの成長が、ソフトバンクの成長を左右する

今後のソフトバンクのビジネスを考えると、SBGの存在は抜きにできない。SBGの成長が、ソフトバンクの成長を左右すると考えられる。

ソフトバンクが収益を獲得するには、より通信速度の速いサービスの提供や、新しい通信デバイス(携帯電話)の投入などで、契約者を増加させなければならない。そのためには、SBGとの協働が重要になる。

具体的には次のような展開が考えられる。SBGがスタートアップ企業への投資などを進めて新しいテクノロジーなどの実用化を目指す。その上で、ソフトバンクが新しいテクノロジーを用いた通信サービスやコンテンツビジネスを提供して、収益を獲得する。

最大のリスクは、孫氏の後継者問題

突き詰めて考えると、SBGにとって最大のリスクは、孫氏の後継者問題だ。それがどうなるかによって、SBGおよび関連企業の成長は左右されるだろう。SBGは孫会長の眼力によってスタートアップ企業の創業者の資質を見極め、出資を行い、成長を取り込んできた。

孫会長と同じ、あるいはそれ以上の眼力を持つ人材を確保できるか否かが、SBGとソフトバンクをはじめとする関連企業の成長を左右するだろう。孫氏の発想力や人を引き付ける力、アニマルスピリット(成長を追い求める血気、野心)を考えると、そうした人物を見出すことは口で言うほど容易なことではないだろう。また、ビジョンファンドに出資を行っているサウジアラビア政府のリスクなどもSBGの経営を左右する恐れがある。

ソフトバンクの株価動向は同社の経営管理体制の改善と強化の進捗だけでなく、親会社であるSBGとの関係、SBGの経営の持続性向上などとともに考えていく必要がある。上場後もSBGはソフトバンクの66%超の株を保有している。

SBGに求められることは、同社の取り組みによってソフトバンクの持続的な成長が期待できる環境を目指すことだ。それができれば、ソフトバンクの株主価値の向上も期待できるだろうし、先行き不安もある程度解消されることも考えられる。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
(写真=EPA/時事通信フォト)
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