できないのは、勉強量が足りないからだろ!
高学歴の親による弊害は、ほかにもある。両親ともに医師のBちゃん(小4)は、3歳のときにアスペルガーと診断された。しかし、両親はそれを受け入れられず無視してきた。でも、小学生になるとやはり周りとの差が出てくる。Bちゃんは文字や言葉に関しては天才的だが、数字は見るのもイヤ。
高学歴の親はプライドがあり、「わが子にかぎってそんなことはない」と思いたがる。Bちゃんの両親は、2人とも仕事が忙しい。必要なのは、家庭内の和やかな会話なのだが、その時間はない。そして、勉強はすべて家庭教師に丸投げだ。Bちゃんは言葉をよく知っているため、大人の言葉を何でも屁理屈で返す。学校の先生も、塾の先生も、お手上げだ。忍耐力のある家庭教師の言う事だけは、少しは実行できる。そんな調子だから、2時間の算数の授業も2問解ければいいほうで、効率的に勉強が教えられる状態ではない。ふだん、4教科を週4回のペースで受講しているBちゃんの家庭は、夏休みは授業回数をもっと増やして100万円以上の家庭教師代を支払った。しかし、このままでは成績は伸びない。
Bちゃんのケースは、特殊すぎるかもしれないが、高学歴の親が勉強でつまずいているわが子を見て、「なんで、私の子なのにできないのか」と思い、否定的な言葉を投げつけることはよくある。そういう言葉を投げ続けられた子供は、自己肯定感が下がり、勉強に対する意欲を生み出すことが難しくなる。
「頑張れば、おまえはもっとできる! できないのは、勉強量が足りないからだろ!」と根性論を押しつける親もいる。でも、それは父親の大学受験の成功体験がベースになっているのであって、小学生には通用しない。繰り返しになるが、高校生と小学生では、体力も精神力も違うからだ。そして何より、親子でも別の人格であることに気づいてほしい。
おまえが甘いからじゃないか?
高学歴の父親の圧力は、専業主婦の母親にも重くのしかかる。Cくん(小5)の家は、家族代々東大卒の医者だ。父親も、祖父も、曾祖父も。だから、Cくんも東大に行き、医者になる人生設計があらかじめ組まれている。ところが、Cくんの成績は、難関中学にはほど遠かった。
「ひどい成績だな……。おまえが甘いからじゃないか?」
子供の成績が悪いのは母親のせい――。夫だけでなく、義父母、親戚からのプレッシャーに押しつぶされそうになる母親。そのストレスのはけ口は、自然と子供へと向かう。
「なんで、こんな点数しか取れないの!」
「なんで、できないの!」
母親のイラダチが、子供を傷つける。残念ながら、そういう環境にいる子は伸びづらい。小学生の子供の成績は、家庭環境が大きく影響するからだ。親が不在にしがちだったり、家にいても、いつもイライラしていたりすると、落ち着いて勉強ができない。極端な話、親が勉強を教えられなくても、いつもそばでニコニコ笑っていれば、子供は伸びていくものだ。