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失敗させないと、子供は伸びない

学歴に関わらず、「わが子を失敗させたくない」と思う親が多い。あふれる情報の中で「これをやるといいらしい」「これをやったらよかった」などの有力情報をキャッチすると、すばやく行動に移し、子供にやらせたがる。

また、運動会でビリになったらかわいそうだから、走り方教室に通わせる。小学校で鉄棒の実技テストがあるからと、逆上がり教室に通わせる。小3の2月から始まる中学受験コースで、上位クラスでスタートしたいから、未就学児のうちから早期教育をさせる。何でもかんでも、先回りする親が増えている。Cくんの母親のように、子育てにプレッシャーを感じている親は、とくにその傾向が強い。

親はよかれと思ってやっているかもしれないが、たくさんの習い事をしている子は、受け身になりやすい。幼いころは、子供はとりあえず親の言うことを聞くしかないので、楽しみながらやっていないことが多い。

「○○に行けば、●●になる」「○○をすれば、●●になる」。因果関係だけを考えて、親は先走る。速く走れるフォームを教えても、脚力がなければ伸びないのだから、場当たり的にやらせているにすぎないのに。

ぼんやり歩いていたら、段差に気づかずに転んでひざを擦りむいた。痛かった。もうこんな思いはしたくない。そうやって、次は気をつけるようになる。でも、親からいつも守られ、手を差しのべられている子は、そういった経験ができない。人は、失敗をしないと伸びないのだ。

仕事と子育ては、まるで別物

スピードと結果を求める父親と、失敗をさせたくない母親。どちらもわが子のためを思ってのことだ。しかし、何度も繰り返すが、小学生の子供は未発達なため、大人のように効率的に結果を出すことはできない。むしろ、たくさんの無駄を経験させることで、あとから伸びていく。無駄な経験の蓄積が、大切なものを選び取る能力を育てるのだ。

たとえば、幼児期に外遊びをたくさんした子は、さまざまな場面で、道具がなくても自分の経験と今あるものを組み合わせて工夫することができる。習い事に時間を奪われていない子は、いくらでも寄り道ができ、その中で美しい花を見たり、不思議な形の虫を発見したりする。1つひとつの小さな経験が知識となり、たとえば、理科の授業では、それらが別の知識と結びついて理解が深まっていく。

わが子の幸せを望むのであれば、幼児期にたくさん遊ばせ、小学生にはたくさん試行錯誤させることだ。高学歴で、仕事もできる親から見れば、非効率的に感じるかもしれないが、仕事と子育てはまるで違うことを肝に銘じてほしい。

(写真=iStock.com 構成=石渡真由美)