ましてや人前で1人を名指しで叱ることは、女子に限っては絶対にNGです。それが心の傷となったり、「あの先生の授業はもう聞かない」などと頑なになって成績が下がってしまうことがあるからです。女の子を個別に叱る時には、人前を避けるということは覚えておきましょう。これは、私たちが新人の先生、とくに男性の先生にお話ししていることです。

吉野 明(著)『女の子の「自己肯定感」を高める育て方:思春期の接し方が子どもの人生を左右する!』(実務教育出版)

これはご家庭でも同じです。親の期待に応えたい女の子には、「あなたはどうしてそうなの」「あの時も同じことをしたじゃない」などと過去にまで遡って、徹底的に追いつめるような叱り方は、その行為だけでなく、人格そのものを否定されていると感じてしまいます。反省するどころか、「自分はダメだと思われている」「自分は期待に応えられていないのだ」と自己肯定感を下げてしまうことになるからです。

褒めるときにも注意が必要

女の子は人前で叱ってはいけないだけでなく、実は人前では褒めてもいけないのが難しいところです。もちろん、本人に実力があることを周囲の誰もが認めている場合には問題ありませんが……。

音楽委員のDさんがリーダーとなり、優勝した合唱祭。Dさんのがんばりを見ていた担任の先生が、みんなの前で「Dさんがリーダーとなって、みんなをまとめてくれたので優勝できました」と褒めたところ、Dさんの顔はみるみる曇っていきました。いったい、なぜでしょうか?

実はDさんは誰も手を挙げなかったので、自信はなかったけれど、仕方なく音楽委員に立候補したのです。なかなかみんなをまとめることができず、音楽の才能のある子のアドバイスでかろうじて乗り切ってきたのでした。

このようなケースで1人だけ褒めてしまうと、Dさんを追い込んでしまうことになりかねません。ヨコ並びであることを重視する女子においては、突出するとどうしても周囲から浮いてしまうことが多く、へたをすると「ひいきされている」「いい子ぶっている」などと、他の女子の攻撃対象になってしまうことがあるのです。