この4つの因子はどれも相互に影響し合っているので、幸せになるためにはこの4つをバランスよく高めていくのが基本です。

とはいえ、「僕は1人でいるのが好きだから、人とのつながりはいらない」とか、「私は上司に言われたことだけをやるのが気楽でいい」という人もいるかもしれません。しかし1人で仕事に没入するのが好きな人でも、その成果を喜んでくれる人がいることはモチベーションになるはずです。あるいは言われたことをやるだけでいいという人でも、仕事の進め方はある程度任せてもらったほうが楽しく働けるでしょう。したがって基本的にはこの4つを満たすことが、社員を幸せにするのです。

「お客さまを第一」という価値観を疑ったほうがいい

そうはいっても、自分たちの幸福を第一に追求することにためらいを感じる経営者もいるかもしれません。「企業はお客さまを第一に考えるべきで、社員の幸せは二の次だ」という価値観は深く浸透しています。ところが実際は、まず社員の幸せを追求したほうが結果としてよい経営ができるのです。

トヨタグループの豊田章男社長も社員の幸せを重要視している。(時事通信フォト=写真)

なぜなら幸福な社員は不幸な社員よりも創造性が3倍高く、生産性が約1.3倍高いことがわかっているからです。さらに幸せな社員は欠勤率や離職率も低く、同僚を助ける、昇進が早い、売り上げが多いなどの特長を持つことが解明されています。

かつてはここまで研究が進んでいなかったので、「社員を幸せにするよりもまずは利益を出すことのほうが先決だ」と思われていたのですが、実は利益は結果であって、社員を幸せにすれば利益が出るのです。幸せな社員は自主的によく働きます。だから企業は長期的に繁栄するというわけです。

現在、「働き方改革」で残業削減に取り組んでいる企業も多いでしょう。残業が減ると社員は幸せになりそうなものですが、無理やり「残業を減らせ」と命じると、社員は「やらされ感」を感じて不幸になってしまいます。不幸になると創造性が3分の1になるので、残業を減らすアイデアも出てきません。それよりも社員がみんな幸せになれば、生産性が1.3倍になるわけですから、10時間の仕事が約7時間半で済み、結果として残業が減るというわけです。