とりあえず、何か1冊読んでおくか。そう考える人が多いのだろう。オバマ大統領を取り扱った本がブームである。書店の特設コーナーからまとめ買いして読んでみたところ、関連本はおおむね3つのタイプに分けられた。1つは、選挙時や大統領就任時の演説内容に焦点をあてたもので、一番売れ行きがいい。次に、自伝、あるいは評伝。そして第3のタイプは「浮かれてる場合か! アメリカのこれからをちゃんと考えよう」といったテーマの評論である。

どれか1冊を書評に取り上げようと思ったのだが、今一歩食指が動かなかった。評論系は、名のある論者がもっともな説を展開しているが、どれもいくぶん慌てて書いた印象が否めない。伝記物は好みだが、いかんせんオバマ氏自身が若すぎ、まだ物語の途中という感じだ。スピーチ本は、私の専門に近すぎて逆に書きにくい。そこでちょっとヒネって堅めの本を紹介したい。

ハーバート・サイモン賞(アメリカ政治学会)を受賞した本書は、行政における「政治化」の問題を真っ向から取り上げる。ここで言う政治化とは、大統領が行政機構の主要ポストに自分が任命した人物をつけ、政治的影響力を行使する度合いと考えていいだろう。ビジネスパーソンが人の上に立つ場合でも、もし選べるなら自分の息のかかった、好意的なメンバーで固めたいと考えるのが普通だ。ましてアメリカ大統領である。議会を牽制しながら官僚機構を効率的に動かすには、重要な地位に自分のシンパを指名することが不可欠と言える。ただ、それにしてもスケールが大きい。大統領が自らの裁量で任用できるポストは3000を超えるという。