「尖ったゲーム作り」の方法論はまだ錆びていない
02年に山内氏の後を継いだ岩田氏は、任天堂向けのソフト制作会社を立て直したスーパープログラマーで、各部署に顔が利く人物だった。岩田氏は部署間に横串を通して風通しをよくすることで、開発に活力を生み出そうとした。一方で開発規模の拡大に伴い、社員数も急増。孤高の中小企業であろうとした任天堂も、この頃から徐々に変化してきたのではないだろうか。
近年、変化の象徴として映ったのが、15年のDeNAとの業務・資本提携である。苦手分野であるネットワークインフラの拡充が狙いで、フラットな関係の協業は今までにはない印象を受けた。また日本の家庭用ゲーム業界ではこの十数年、開発者会議を開いて情報を出し合い、切磋琢磨して業界の底上げを図ろうとしている。そこに距離を置いていた任天堂が、ここ数年、参加して自社の技術情報を提供するようになったのだ。
こうしたオープンな方向での変化が目立つ一方で、スイッチの大ヒットは「尖ったゲーム作り」が任天堂の本願であり、その方法論がまだ錆びていないことを社内外に知らしめた。6月に就任した古川俊太郎新社長は、「オープン」と「孤高」の2つのバランスをどうとっていくのか、今後の手腕が注目される。
ゲームジャーナリスト
雑誌「ゲーム批評」編集長などを経て、2000年よりフリーのゲームジャーナリスト。NPO法人IGDA日本事務局長。専門学校東京ネットウエイブで非常勤講師もつとめる。主な編著に『ゲームクリエイターが知るべき97のこと 2』(オライリージャパン)などがある。