「疲れやすいのは、年をとって体力が落ちているせいだ。睡眠をとるより、運動をして昔のような体力をつければいい」と体を鍛えている読者もいるかもしれないが、むしろ逆効果だという。

「筋肉は年をとっても増やせますが、自律神経の機能は確実に老化します。筋力を鍛えて若い頃と同じ重さのバーベルを持ち上げることはできても、運動による呼吸・心拍の調整機能は確実に低下しています。自律神経機能が年々低下しているのに、心拍や呼吸、血圧などの調整が必要な激しい運動をすると疲れはたまる一方です。激しい運動で酸素の吸入量が増えれば、活性酸素が増え、細胞を守るシステムが処理できる量を超えると、自律神経の中枢が酸化されて疲れる、という悪循環が起こります」

運動だけでなく、ハードワークをしたとき、達成感を感じて疲労が吹き飛ぶこともあるが、「それは脳の錯覚。人間の場合、意欲を感じる前頭葉が発達しているため、疲れを隠してしまうのです。いわば、隠れ疲労で、それこそ蓄積したら危険です」。

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では、疲れを感じたら、通常より長く睡眠をとればいいのだろうか。

「(最適な)睡眠時間には個人差があり、4時間の人も8時間の人もいます。大切なのは、その人に合った時間で良質な睡眠をとることです」

ちなみに、「自分はベッドに入ったとたんに眠れるから熟睡している」「いびきをかいて微動だにしないと言われるから、ぐっすり眠れている」というのは勘違いだという。

「5分以内に眠れる人や電車ですぐ眠ってしまう人は、普段良質な睡眠がとれておらず、いわゆる『寝落ち』した状態です。また、いびきをかいている状態は、気道が狭くなって酸素が取り入れにくく、自律神経が血圧や心拍数を上げて活動してしまっています。つまり、本来睡眠をとって休ませる自律神経を働かせていて、結果的に良質な睡眠をとれていないのです」