「暑さに負けた」と思いたくないから、走ることをやめられない

WBGT28~31度は激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。WBGT25~28度でも積極的に休息をとり、熱中症対策として水分・塩分の補給を適宜しないといけない。WBGT21~25度ですら熱中症が発生する可能性があるため注意が必要だという。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/sportpoint)

今年7月には、愛知県の小学1年生が1時間半ほどの校外学習から戻った後、意識を失い、死亡するという事故が起きている。気温35度を超えるような日に皇居を走るなんて、本当にクレイジーだ。

皇居まわりは木々が多いとはいえ、天気が良ければ、直射日光をもろに受ける場所もある。日本で最もランナー密度の高いエリアだけに、マイペースを保つのは難しい。競う気持ちがなくても、他のランナーを意識して、ついつい頑張ってしまうことも危険要素になる。

そして熱中症において、一番危ないのは、「自分は大丈夫」と思っている人たちだ。学生時代に暑さは十分に経験している、毎日走っている、もっと暑い日に運動したことがある。「暑さに負けた」と思いたくないため、走ることをやめられない。

「自分は大丈夫」という根拠のない過信

「自分は大丈夫」という根拠のない過信は、大惨事を招くことがある。睡眠不足や体力低下などのリスクが、「暑さ」で一気に噴出することがあるからだ。真夏のランニングは、たいした準備もせずに冬山に登るくらいの「危険行為」だと思ったほうがいいだろう。

7月25日、サッカーW杯ロシア大会で活躍した香川真司が所属するドイツのチーム(ドルトムント)に合流するために日本を後にするとき、今夏の酷暑を懸念。集まった報道陣にこんな話をしている。

「7月のこの時期にあまり日本にいることがなかったが、日中はサッカーをやれるコンディションではない。その驚きがあった。危ないな、と感じた。これから異常気象が続く中で、スポーツ界は考えていかないといけないことがあるのではないかと感じました」

サッカーやラグビーのような持久力を要するスポーツの場合、猛暑の中では試合の質が低下する。それだけでなく、日々の練習でも、質の高いトレーニングをするのは難しい。

実業団や強豪大学の長距離ランナーは、暑さの中で練習することは少ない。夏の大半は北海道や標高のある長野など、涼しい場所で合宿を組むことが多いからだ。どうしてもランニングをしたい人は、早朝や夜など比較的涼しい時間帯を選んで走るべきだろう。また暑さをしのぐためにエアコンの効いたジムでトレッドミルを活用するのも手だ。