参加条件は「自分が主役」
以上のように歴代米国大統領は自らの出自や背景に合わせた得意なコミュニケーションスタイルを持っている。では、現職のトランプ大統領のコミュニケーションスタイルはどのようなものだろうか。ずばりトランプは「芸能人スタイル」だ。そもそもトランプは自分が主役になれない場には決して参加しようとしない。
一例を挙げると、大統領選挙予備選挙時のアイオワ州の選挙直前に不得意な候補者討論会をわざと欠席し、近くの施設内で負傷帰還兵の支援集会を開くという演出を行ってメディアの注目を集めてみせたこともあった。既存の他人に設定された舞台に対応するのではなく、常に自らが最も目立ち続ける場を独自に創り出し、メディアの紙面・放映時間を支配するやり方がトランプのコミュニケーションの基本である。
トランプの自由奔放なツイッターの活用方法も重要なコミュニケーション戦略の一環だ。大統領選挙時・大統領就任後も毎日のように繰り出されるトランプの平易な言葉で端的にまとめられた「つぶやき」はメディアを独占し続けている。ヘッドラインに流すためには英語の短文が必要があり、ツイッターはトランプ戦略にはおあつらえ向きのツールだ。
その結果として、トランプは報道に先んじてつぶやくことで、メディア側に「その日に何を報道するか」という選択肢を与えず、自らのつぶやきを論評・解釈させ続けることができる。さらに、最近では他国との交渉事に際して「きっといいことが起きる。見てみよう」というような形で聴衆の注目・期待を引っ張り続ける話法も頻繁に駆使するようになった。
そして、数カ月にもわたる長丁場の国際交渉を1つのドラマとして演出し、自国民や世界の人を飽きさせないように工夫している。トランプの言葉を受け、皆が次に何が起きるのか、ドキドキしながら待ち焦がれる状態になっている。