オノマトペ(擬音語・擬態語)をAIに理解させる
では現段階で、AI記者はどれだけのレベルの文章をつくることができるのだろうか。
「定型のニュースの速報的な記事はすでにAIでつくられている事例がありますが、音声データをテキスト化できるので、たとえば取材の音声データを送れば取材した内容を自動的にまとめることは可能だと思います」
新製品の記者発表会のように、話している内容をそのまままとめるだけの記事なら、現時点でもAIは可能ということだ。ただ、インタビューの構成のように、話している内容を単純にまとめるだけでなく、言葉の背景にある思想や歴史、場の空気感なども考慮するものについては、まだまだ難しいようである。
また、AIには“体”がないので取材の現場に行くことはできないが、現場の画像や動画を見せれば、物体認識の技術によって見えているものをテキスト化し記事を作成できるという。
「特にスポーツのように決まった動作をするものは、AIに学習させやすいと思います。もしかしたら将来はAIによる野球の実況中継なんてこともできるかもしれません。ただ、反射神経やアドリブをもって実況することは難しいと思います」
では、コラムや小説といった創作性の高いものについてはどうだろうか。
「私はアイドルの楽曲の歌詞をAIでつくりましたが、詩や歌詞のように、ある程度不自然でもそれが味になるものについてはすでに実現可能です。ただ、コラムや小説のように起承転結が複雑なもの、また小説のようにストーリー性のあるものについてはまだ難しいと思います」
とはいえ、創作性の高い文章に関する研究は少しずつ進んでいる。
「私は現在、AIに比喩を生成させる研究や、『さらさら』『もふもふ』といった人の触覚からきている表現、オノマトペ(擬音語・擬態語の総称)をAIに理解させる研究をしていますし、ある研究者はAIに皮肉を学習させる研究を行っています。皮肉は面白さの理解にもつながりますから、人間が面白いと思うものをAIが理解する日も近いかもしれません」