売れる自分を、ゴミ拾いで培う

“本音”を露わにしていれば、それに対する“本音”をストレートに伝えてくれる人も出てきます。社長に就任して間もない頃、ある事業部で全体集会を開催し、私が今後やっていきたいことを話す機会がありました。その後の懇親会で、ある女性社員が私にこう言ったんです。

「今日の高島さんの話は全然響かない。過去の話であり、自慢話にしか聞こえません。入社3年目の若手社員が聞いたら、本当にちんぷんかんぷんだと思います」

その場が凍りついたようになりましたが(笑)、“本音”をぶつけてくれて「ありがとう!」ですよね。それからは、相手に合わせて話の流れや中身を変えるようにしました。このように相手に対する気遣いを学べるのも、本音で話し合えるよさだと思います。

朝の散歩や通勤時にゴミ拾いをしている高島社長。いつでもゴミ拾いができるよう、鞄の中に紙袋を常備している。

先ほど、「商品より先に自分を売る」と言いましたが、そのためには売るべき自分がなくてはなりません。本音で相手と語り合うにも、“確固とした自分”が必要となります。ではどうしたら、自分を鍛えられるか。私は仙台工場時代から通勤時にゴミ拾いをしていますが、このことが自分に対する自信に繋がったと思っています。社内や近所のトイレ掃除を何十年もされている経営者の方もいらっしゃいますよね。人のために立派な行動をされていてすごいな、と思っていました。しかし違うんです。ゴミ拾いを半年して気づきました。ゴミ拾いは自分のためでもあるんです。通勤時、ゴミを見つけたら拾う。それを何年も続けていると、「自分との約束」を果たせたことが自信に繋がります。そうすれば、恐れず“本音”を言えるようにもなるんです。

私は今でも朝の散歩や通勤時にもゴミを拾うようにしています。でも、家の近所の目黒川周辺はゴミ拾いをしている方々がたくさんいて、最近はゴミを見つけるのが大変なんですが(笑)。

▼高島社長のマナー5
1 会話で「聞く」と「話す」の比率は?

7対3
2 社内・社外の会食の頻度は?
社内:週1回(最初に顔を出す程度) 社外:週3~4回
3 定番にしている手土産は?
当社のワイン(例えば「テタンジェ」は、ノーベル賞の晩餐会で使われているシャンパン。そういったストーリー性があるものをお持ちすると会話の糸口になる)
4 ビジネスファッションのこだわりは?
ネクタイはシンプルで質のいいもの
5 会食のお礼は「メール」「手紙」「電話」のどれか?
メール5割、手紙4割、電話1割
高島英也(たかしま・ひでや)
サッポロビール社長
1959年、福島県生まれ。東北大学農学部卒業後、82年サッポロビール入社。2007年仙台工場長、09年取締役兼執行役員 経営戦略本部長を経て、13年に常務執行役員北海道本部長兼北海道本社代表に就任。15年にポッカサッポロフード&ビバレッジ取締役専務執行役員に就任。17年から現職。
(構成=小澤啓司 撮影=栗原克己)
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