著名ブロガーやインフルエンサーの多くが、岡本さんの犠牲を自分ごとに置き換えて恐怖を感じることは当然であり、それを責めることはできない。
岡本さんの「芸風」の問題ではない
一方で、今回犠牲になった岡本さんについて「恨まれた相手が悪い」「いじめられっ子の反撃だ」などといった趣旨の投稿も見受けられる。また、他の「炎上」の多い著名ブロガーやインフルエンサーに対して「芸風」の転換を要求するような投稿もある。
確かに、岡本さんのブログでは、批評する相手に対する厳しい姿勢も多々みられた。ある種の敵が多そうな「芸風」であることは否めない。しかし、暴力はいかなる動機、理由をもってしても正当化されることはない。この期に及んで暴力を是認、ないしは肯定する意見を持つ人は、今一度想像力を働かせることが必要だ。
もし、自分の気に入らない言論に対して、暴力やテロで報いることが許されるかのような言説が広まれば、それは結果として、自由にものが言えず、武器で(文字通り)命を懸けて果たし合う社会へとつながるだろう。その悪影響は必ず、暴力を是認したその人自らに返ってくる。
その意味で、私たちがこうした悲劇に立ち向かうためには「テロは許さない」という社会的コンセンサスのもと、テロを是認する言説を強く、明確に否定することが必要だと感じる。岡本さん1人の問題に矮小化しないことが必要だ。結果として、多くのブロガーやインフルエンサー、読者らの萎縮が少しでも緩和され、自由な表現ができれば、それが岡本さんの犠牲に報いることにつながるだろう。
JX通信社 代表取締役。1988年(昭和63年)山口県生まれの29歳。2008年、報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、テレビ局・新聞社・通信社に対するAIを活用した事件・災害速報の配信、独自世論調査による選挙予測を行うなど、「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指した事業を手がける。