3年目のシーズンの始め、筒香さんに言われた言葉がある。

「1年間、毎日調子がいいわけじゃない。それは当然のこと。でも、ここは勝ちたいというところを自分で考えて、そこに100パーセントの状態でいける準備はしておけ」

3年目は、要所でこの言葉が浮かんできた。

山崎康晃『約束の力』(飛鳥新社)

考えながら、調整をして試合に臨む。

たとえば、「今日はキレでいく」「今日は140キロ前後のボールでストライクを取りに行く」と、自分でテーマを決めて臨んだ試合だったら、打たれて結果が出なくてもOK。

長いシーズン、そういう日があってもいい。ただ、それをムダにはしない。事実と結果を受け入れて、次につなげる。この積み重ねが、成長につながるわけだ。

「今日のピッチングは、ただ打たれたわけじゃない」

筒香さんが、そういう観点から見てくれているのを心の支えに、試合に臨んでいた。

負けられない試合ほど気負わないこと

2017年のチームは前年、初のCSを経験。次はリーグ優勝、そして日本シリーズへと、確かな成長を遂げつつあった。

優勝を経験したことのない僕たちが、それを身近なものに感じながら、どういう気持ちで試合に臨めばいいのか。常に目をそらさず、ぶれない目標にしながら、向き合って戦えていたと思う。

そして……真っ青に染まった横浜スタジアムの大歓声に後押しされ、勝つために戦うことの喜びを体感した。本当に最高!

僕自身について言えば、2年目の経験もあり、チームの勝利を重く感じないようにしていた。「僕が抑えないと勝てないんだ」という思いは、要所で感じる場面もあった。

だけど、順位を争う中、負けられないゲームでマウンドに上がるときほど心がけたのは、決して気負わないこと。

「うまく腕が振れさえすれば抑えられる」

そうシンプルに考えてマウンドに上がっていた。もちろん打たれて落ち込む日もあったけど、比較的気持ちは安定したと思う。

やるべきことを徹底し、周りに左右されない毎日。調子を大きく崩す時期もなかったし、平均的に調子の良し悪しの幅が少なかった。極めてレベルが高いシーズンを送れたと思っている。

山崎康晃(やまさき・やすあき)
野球選手
1992年10月2日生まれ。東京都荒川区出身。 帝京高校、亜細亜大学を経て、2014年秋、ドラフト1位で指名を受け、横浜DeNAベイスターズに入団。15年、開幕からクローザーとして活躍、年間37セーブをあげ、NPBの新人最多セーブ記録を更新。16年にはチーム史上初のクライマックス・シリーズ進出、17年にはチーム19年ぶりとなる日本シリーズ出場に貢献。3年間でNPB史上初「新人1年目から3年連続シーズン20セーブ」の記録を樹立。日本を代表するクローザー。
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