閉店ラッシュ! これまでのゲームが終わった

バンクミーティングのあと、6店舗を閉めた。箱は持ち物だったので、他社に貸した。毎月50万円以上の赤字を出していた店が、家賃50万円を稼ぎ始めた。「早く閉店しておけばよかったのに」と思われるだろうが、そう簡単ではない。閉店するとパート社員の職を奪うことになる。それに、店は自分の分身みたいなものだ。閉めるたびに涙が出る。閉店は本当に嫌いだ。閉めたあと、その近くに行くことすらできない。

銀行対応も含めた財務は、昔も今も実弟の仕事だ。いちばん資金繰りが厳しかったころ、弟は夜も眠れなかったと言う。私は眠れていた。売り上げが上がればいいのだろう、と考えていたからだ。バンクミーティングが開かれ、閉店もして、私はようやく観念した。もうこれまでのゲームは終わったのだと。

そして、新しいゲームが始まった

今期の売り上げは約12億円で、ピーク時の半分以下だ。しかし、ここ3年は最高益、もしくはそのレベルを維持している。このままいけば、負債を返しながら、少しずつ投資も可能だろう。私は、仕事も、人生も、すべてはゲームのようなものだと思っている。銀行から借り入れができないというルール変更は、飲食チェーンのビジネスでは、まったく違うゲームを意味する。だったら、新しいゲームを楽しむしかない。そう割り切っている。

私の新しいゲームは、お金をかけずに稼ぐのがルールだ。新規事業として目をつけたのがパクチーだった。パクチーをたくさん食べた翌日、いつもなら妻から「お酒臭い」と言われる量を飲んだにもかかわらず、「まったくお酒臭くない」と言われたことがきっかけだった。調べてみると、パクチーには農薬や肥料、食品添加物に含まれる重金属を、体内から排出する作用があるというではないか。

これもエビデンスがないと効果をPRできないから、大学と共同研究をした。生産は外部委託、売るのもネットだから営業もいない。社員が1人で、半日メンテナンスしている程度だ。思い立ってから8年、年間2000万円の利益を出すようになった。