新規事業では、多くの会社がつまずく。代表的な敗因は、顧客を持っていないため、売り先がないこと。もう一つの要因は、商品やサービスに新しさがないことだ。顧客に求められる商品やサービスを生むには、新鮮な情報が欠かせない。情報収集力こそ、ビジネスパーソンの生命線である。プロパンガス販売からリフォーム、環境ビジネスへと次々に新規事業を成功させているアイ・エス・ガステム会長の石井誠一さんに、新規事業の進め方や情報収集のコツを聞いた。

人を喜ばせるのが商売だ

両親が一所懸命、どろくさく働いている姿が好きだった。プロパンガス会社だから、トラブルが起きたら、夜中でも対応する。枕元に電話を置いていた。休みは元日だけで、1月2日から仕事を始める。子供のころは、年に一度しか遊んでもらえなかった。

親父は儲けが出たら、事業を広げるために使った。マンションを建てたり、ベンツを買ったりする人もいたが、余計なことは一切しなかった。そして、親父は社員に好かれていた。どこまでも顧客本位で、社員思いの親父を見ていると、「人を喜ばせるのが商売なのだ」と気づかされた。私は生物学者になりたいと思っていたが、結局はそんな親父を喜ばせたくて、家業を継いだ。大学を出て石油会社に勤めていた20代後半、家に戻り、36歳で社長になった。

会社を率いる準備のため、31歳のころだったか、セミナーや研修など、外で勉強することを自ら始めた。親父は、帝王学らしきものを一切教えてくれなかった。お金は出しても、口は出さなかった。教えられたことをやっているだけでは、考える力はつかないから、今では何も教わらなくてよかったと思っている。何もないところから、自分で目標を作り、ゴールに向かうのだから、失敗を繰り返す。いろいろな人に会い、ときにはだまされた。転んで、すりむいて、少しずつビジネスのコツを心得ていくプロセスは、お金では買えないものだった。