もし、トラブルに巻き込まれ、弁護士に頼りたいときが来たとしよう。顧問弁護士がいない場合、何を頼りに探せばいいのか。「弁護士から見ても、いい弁護士というのは見分けづらい。一般の方なら、なおさらだろう」と島田直行弁護士は言う。ただ、「判断材料なら、いくつか挙げることができる」と続ける。どういうことか――。
写真=iStock.com/Chris Ryan(イメージです)

「お客様の声」を鵜呑みにしてはいけない

私から見ると、弁護士とは単なる「個人事業主」だ。崇高な理念があっても、収益がなければ暮らしていけない。「恒産なくして恒心なし」というのは、まさに正鵠を得ている。ご存じのように弁護士の数は急増しており、もはや黙っていても仕事が来るという時代ではない。そのため、私にもマーケティングセミナーの案内がひっきりなしに送られてくる。

マーケティング手法のひとつに「差別化」がある。ネットでは、「労働問題に強い」「相続が得意」などといった表現を目にすることも多い。一般の方には、「この分野に強い先生なのだな」と見えるかもしれない。だが宣伝文句は、その大半が“自己申告”だ。「得意」も「強い」も、キャリアの有無に関係なく書くことができるから、あてにならない。飲食店のように口コミ情報がつかないから、自分でPRしなければならないという事情もあるにはあるのだが。

ホームページに載っている「お客様の声」もそうだ。自分が依頼した弁護士から「自由にアンケートに答えてください」と言われたとして、批判的なことを書く人はあまりいないだろう。つまり、ネット上の自己PRは、あまり参考にならないのである。

また、世の社長たちは、他の社長から弁護士を紹介してもらうことが多いようだ。問題は、実際に仕事を依頼したことがある弁護士を紹介してくれたのかどうか。ありがちなのは、会合で名刺交換をしただけ、というケースだ。これでは「単に知っている人を紹介した」にすぎない。それなら、税理士や司法書士といった士業の人たちに相談してみることだ。少なくとも評判の悪い弁護士は紹介しない。いや、できないはずだ。紹介した自分の名前にも傷がついてしまうからだ。

他の社長より、他の士業より、弁護士をよく見ている人たちがいる。