改革を推し進める彼らを「ポピュリズム」と斬り捨てるのは失礼だ

もちろん、五つ星運動にも問題は色々あるだろう。しかし既存のイタリア政治にも問題はたくさんある。五つ星運動の問題点だけを取り上げて、ポピュリズムだと斬り捨てるのは五つ星運動のメンバーやそれを支持するイタリアの有権者に失礼極まりない。

既存のイタリア政治の問題を何とか変えたいという有権者のエネルギー。それをうまく集約化し前進させているのが五つ星運動だろう。

今回のイタリア総選挙では、結局、単独グループ・単独政党としては、五つ星運動が最多得票率となった。イタリアの多くの有権者が支持したのだ。しかもイタリアでも、世界でもポピュリズム集団、素人集団とかれこれ9年間叩かれまくってきたにもかかわらず、今でも勢力を伸ばし続けている。他方、維新は全国拡大が止まってしまった。

新しい政治運動を全国拡大させるのは本当に大変だ。自称インテリたちはその苦労も知らずに、口だけの評論をする。五つ星運動の彼ら彼女らは、その大変なことを、イタリア政治を少しでも良くしたいとの思いだけで、死に物狂いでやっている。問題点を改善するためには外野評論家も、どんどん問題点を指摘すればいい。しかし、ポピュリズムというたった一言で斬り捨てるのは間違っている。政党を育てるのは有権者だ。日本にも強い野党が存在しないと嘆く声は多いが、そのような状況にしているのは、まさしく有権者の責任だ。学者や自称インテリのように上から目線で偉そうに政党に文句を言っても、日本の政治は良くならない。当該政党の問題点を真摯に考え、どのようにすれば、より良い政党になるのかを有権者から提案していくことが必要だ。

五つ星運動の彼ら彼女らとホテルのロビーで濃密な意見交換をした後、例のナイロン製のエコバッグの記念品を渡した。彼ら彼女らは大変恐縮していた。もちらん彼ら彼女らは僕に対して記念品など持ってきていない。政治家と民間人の間での相互の贈物交換を当然のことと思っていないようだし、むしろそれを断ち切っている意思が伝わってきた。記念品を渡した僕の方が気恥ずかしくなったよ。彼ら彼女らの、たった一つのこの小さな態度振る舞いで、僕は彼ら彼女らに、イタリア政治を変えてくれるのではないかという期待を強く持った。政治は小難しい政策を山ほど並べ立てることに価値はない。どんなに小さな細かなことであっても実行こそが価値を持つ。

(略)

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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.97(3月27日配信)を一部抜粋し、修正したものです。もっと読みたい方は、メールマガジンで! 今号は《【イタリア五つ星運動】新聞よ、改革の動きを「ポピュリズム」の一言で片づけるな!》特集です!!

(写真=iStock.com)
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