「一部の職員が勝手に書き換えた」とは考えられない
ここで問題なのは、だれのための行政かということである。本来、役人は国民のためにあるはずだ。それがときの政権、首相、閣僚のために存在するようでは、なんとも情けない。
もうひとついわせてもらおう。忖度という言葉だけで今回の森友文書改竄の問題を片付けてはいけない。それではトカゲの尻尾切りになってしまう。
麻生太郎副総理兼財務相は「佐川氏の部下である理財局の一部の職員が書き換えた」と強調しているが、公文書の記載を書き換えるという犯罪行為につながるような大それたことを霞ヶ関の役人が勝手にできるはずがない。
佐川氏の上、つまり麻生氏あるいは安倍首相、もしくはその周辺からの指示があってはじめてできることだろう。
まして財務省は省庁の中の省庁、その役人は官僚中の官僚である。沙鴎一歩も大蔵省時代から付き合いのある人物が多いが、みなそれなりの官僚である。
話を戻すと、安倍政権の官邸政治が、今回の問題を招いたことを安倍首相自らがはっきりと自覚しなければ、また同じような事件は起きる。いまの官邸の政治力を、どうすれば国民のための政治に直結させられるのか。真剣に考えてほしい。
朝日社説は「『安倍1強政治』が生んだおごり」と書く
さて朝日新聞の3月13日付の1本社説から見ていこう。
「問われているのは安倍政権のあり方そのものであり、真相の徹底解明が不可欠だ」
沙鴎一歩が前述したように朝日社説は安倍政権の問題の根底に迫る。中盤ではこう指摘する。
「財務省のふるまいは『全体の奉仕者』としての使命を忘れ、国民に背くものだ」
「それは、5年余に及ぶ『安倍1強政治』が生んだおごりや緩みと、無縁ではあるまい」
根底には安倍1強政治の問題が横たわっている。森友文書の改竄はそれが生んだ負の落とし子なのだ。
「官僚に『政権の奉仕者』たることを強いている」
次に朝日社説はこう書いていく。
「学園への特例的な扱いの背景に、首相や昭恵氏の存在があったのではないか。指示や忖度などはなかったのか」
「政権に忠誠を尽くせば評価され、取り立てられる。官僚機構のそんなゆがんだ価値観もうかがえる」
さらに「内閣人事局の発足などで、官僚の幹部人事は首相をはじめ政権中枢が一手に握っている。だからこそ、政治の任命責任はいっそう重いはずである。その自覚を欠いた麻生氏や首相の言動が、官僚に『政権の奉仕者』たることを強いているようだ」と指摘する。
そのうえで「安倍1強下での行政のひずみが、公文書管理のずさん極まる扱いに表れている。速やかに正さねばならない」と訴える。
朝日社説の指摘は重い。森友文書改竄の根底を捉えているからだ。