しかし、会計検査院の報告内容を見ると驚愕だ。よくこんな契約をやったなと驚くと同時に、ここまでの契約をやるとはよほどの事情があったんだな、と率直に感じる。報告書には、今回の土地取引が異常であり例外的なものであり、確認すべきことがほとんど確認されていない杜撰なものであることが指摘されている。大幅値引きとなったゴミ処分費の積算なんて、いい加減極まりない。あんな積算が通るのであれば、納税者は税務調査のときに、同じような杜撰な税額計算を主張すればいい。
太田氏も、自分たちは徴税機関であることを自覚した方がいい。国民、納税者にはどれだけ厳格な理屈や証拠や計算を求めているのか。今回、近畿財務局がやったレベルの計算や証拠で、納税者が確定申告書を持ってきたら認めるのか? 信頼とは、他人に求めることを自分にも求めることで成り立つ。他人にだけ厳しい者は信頼されない。今の財務省は、自分には甘く、納税者には厳しい存在になっている。
そして、会計検査院の報告書で、今回の土地取引がスーパー・スペシャル例外・異例契約で、大幅値引きの根拠も全く不明なものであることが明確に指摘されている以上、それに反して財務省が、「いや完璧に適正な取引だった」と主張するには、明確で十分な証拠が必要になるが、もはや証拠は廃棄されて存在しないのである。
これまで記録はない、データはない、交渉経緯は分からないと散々主張していた財務省は、最近自分たちの正当性を主張するために、細かな事実を主張してきた。おいおい、それはどうやって確認したんだ? 記録がなく、何も分からないんじゃなかったのか? それだけ細かく緻密に自分たちの正当性を主張するんだったら何で昨年にそれを言わなかったんだよ。
財務省によって証拠は廃棄された。そうであれば、会計検査院の報告書を前提にするしかない。今更、証拠を廃棄した財務省側が、いかにも証拠を基にした細かな主張をもって、会計検査院の報告書に反するような主張をすることは証拠ルール上許されない。
ゆえにまずは廃棄されたとされる書類・データ類の一覧を整理すべきだ。廃棄された書類・データ類には、安倍政権や財務省が不利になる記載があったものと推定する。それは、不利になるから廃棄する、有利なものなら廃棄しないという経験則に基づく。そしてその推定を基に、一定の疑惑をみなしていく。本当に疑惑がなくても、疑惑があったとみなされる。これが証拠法の考え方で、証拠を廃棄した側が受けるペナルティーだ。