その理由は、いくつか推測できます。1つ目は、欧米型の食事は、伝統型の食事より塩分が少ないこと。塩分は高血圧の原因になり、脳や心臓などの血管に負担をかけて、重大な病気を起こします。2つ目は、欧米型の食事はタンパク質が豊富なことです。ヨーグルトやチーズなど乳製品や肉類には、良質なタンパク質が含まれています。
50を超えたら、メタボより「栄養失調」に注意
肥満については関心が高く、生活習慣病を防ぐためにダイエットしている人も多いでしょう。その一方で、タンパク質が不足し、栄養失調になる人も多いのです。特に高齢者のタンパク質不足は要注意です。タンパク質が足りないために、筋肉や骨がやせ、ちょっと動くだけでもつらくなっていきます。すると、運動機能が衰え、心臓や肺の機能も低下し、〈フレイル〉と呼ばれる虚弱状態に陥っていきます。
食べ物があふれている現代社会に、栄養失調なんてありえない――。そう思っていませんか? 実はいま増えているのが、高齢者の栄養失調なのです。60代まで肥満や小太りだった人も、75歳前後になると、だんだんと食が細くなり、体重も減ってやせ始めてしまうケースが少なくありません。この状態が続くと、骨や関節が弱り、筋肉も減っていき、ちょっとしたことで転んで骨折しやすくなります。大きなけががきっかけで、寝たきりになったり認知症になったりすることにもつながってしまうのです。
こうした問題に詳しい、東京都健康長寿医療センター研究所副所長の新開省二先生に話を聞きに行きました。先生は『50歳を過ぎたら「粗食」はやめなさい!』(草思社)という本を書いています。1番メタボが気になる50代で粗食をやめるとはどういうことかと思い、聞いてみると、60代、70代に低栄養による寝たきりや認知症などになって寿命を縮めないよう、50代から食生活に関心を持ち、効率的に質の高い栄養をとるように心がけてほしいとのことでした。