おそらく平和的な現状打開の可能性が、北朝鮮の体制転換でしかないことは、誰もが知っている。最も「平和的」なのは内部からのクーデターだが、政策的な計算の対象になるほどの高い可能性はない。
北朝鮮との国境付近では、中国の人民解放軍が不測の事態に備えている。アメリカの精密誘導兵器による北朝鮮の攻撃能力の迅速な破壊が、あるいは特殊部隊を擁した斬首作戦との組み合わせをオプションとして進められるというのが、起こりうる武力行使の方向性である。
なお日本の「専守防衛」政策論と、国際法上の自衛権行使要件とは、異なる。武力行使の国際法上の合法性は争われるだろうが、少なくとも2003年のイラク戦争のときほどには問題にならないだろう。北朝鮮政府は、いくつかの公式声明ですでに武力による威嚇を行っている。度重なるミサイル実験を「攻撃の意図」を示すものと解釈する余地が発生してしまっている。
政治的に言えば、体制転換と武力行使は、連続した一つの政策になる。武力行使を回避した政権転換が望ましいが、早期の政権転換につながる武力行使も一つの可能性になる。
「戦後処理」に大きく関与する中国とロシア
複雑なのは、北朝鮮の体制転換が、現実的に可能な地域の安定を伴って進められるものか否か、という問いである。
最も大きな役割を果たすのは中国だ。北朝鮮は伝統的に中国の影響下にある。北朝鮮国内の人脈も持つ。増大する国力を背景にして、中国は、自国の影響圏の確保または回復に努めるだろう。逆に言えば、中国の影響力をそぎ落とすような形での「戦後処理」の方法は、ありえない。
ロシアは周辺国の中で、最も良好な関係を北朝鮮との間で維持している。金正恩氏の亡命受け入れ先になっているといううわさすらある。戦後処理への関与は絶対である。場合によっては、かなり大きな役割が求められる可能性がある。