同ペアは、18年1月26日に台湾・台北アリーナで開催されたISUフィギュアスケート4大陸大会にも出場。結果は、ペア部門で銅メダル獲得という快挙だった。この成績はジャイアントキリングといっても過言ではない。韓国では五輪本番を目前に、自国選手たちの成績がふるわないことも相まって、北朝鮮ペアに期待を寄せる論調も目立ち始めている。
ニューヨーク・タイムズは昨年、「北朝鮮の核危機を解消するための次の手段は、外交官からではなく、ビートルズの音楽にあわせて演技する北朝鮮のフィギュアスケーターから生まれるかもしれない」(17年9月2日掲載「North Korea Skaters Seek Olympic Bid, and Diplomats Cheer」)と、このペアを取り上げた。記事の中では、「オリンピックは莫大な費用と慢性的な腐敗で汚れてきたが、IOCは国家が敵対的で断絶されている状況でも、スポーツが人々をひとつにまとめることができるという理想を実現しようとしている」とし、IOCの決断を評価している。
世界的名コーチにカナダで師事し特訓
リョム・デオク-キム・チュシク組は、五輪参加資格がかかった昨年9月のネーベルホルン杯に備え、かなり綿密な用意を進めてきたという。6月中旬から2カ月間、カナダのモントリオールでトレーニングを行った。指導を行ったのは、フランス系カナダ人で、数々の世界大会でメダルを獲るメーガン・デュアメル選手らを育てた名コーチ、ブルーノ・マルコート氏である。
マルコート氏は前出のニューヨーク・タイムズの取材に答え、「リョム・デオク、キム・チュシク両選手が非常に熱心に練習に取り組んでいる」と証言している。「私たちは五輪に出ることができるか」「技術や実力はどのレベルにあるか」「五輪に出るためには何が必要か」など、ふたりが毎日のように一生懸命に質問してきたと、当時のことを振り返っていた。
とはいえ、実際に彼らが五輪でメダルに絡めるかは未知数である。例えば9月のネーベルホルン杯では、用意していた「トリプルサルコウ」を、「ダブルサルコウ」に変更していた。「練習が完璧ではない」というのが、その理由だ。最終的に目標とする「クワトロサルコウ(4回転)」を演技に取り入れるまで、さらに長い道のりだとされる。15位となったISU世界選手権大会でも、優勝チームとの合計点差は約60点も離れていた。