習慣が変わり、自分が変わり、人生が変わる

6)余計な出費がなくなる

靴を磨くようになると、多くの人は「履けなくなるまで、とことん1足を履きつぶす」ということはしなくなります。良質な靴を長く履こうとするはずです。つまりは「あの人の靴はいつもきれい」という印象を周囲に与え続けながら、靴全体のコストパフォーマンスを抑えることができます。

『自分が変わる 靴磨きの習慣』(長谷川裕也著・ポプラ社刊)

例えば、5000円~1万円ぐらいの革靴を毎年履きつぶすのと、3万円以上の靴を大切に扱い10年以上気持ちよく履き続けるのとでは、後者のほうが経済的な面でもものとの向き合い方においても、実践してみたいと思うのではないでしょうか。良質な革靴でしたら、10年程度、お手入れ次第では20年履き続けることができます。「革の質がいいので、しっかり手入れをすればするほど革がなじみ育っていく」「革が自分の足の形にフィットしていく」「いつも気持ちのいい靴を履くことができる」。こうした経験が得られると、生涯に何十足も靴を買う必要がないということがわかります。自分が気に入った靴を、しっかり手入れして使っていったほうが、不必要な出費をなくすことができるということになるのです。

7)行動的になれる

磨かれた靴を履くと、人はどこか行動的になります。洋服を例にとれば、皆さんも経験があるのではないでしょうか。新しい洋服を初めて着たときは、いろいろな場所へと繰り出したくなるものです。靴も同じです。行動的になりポジティブな気分で出掛けることが、新しい出会いや発見につながります。そしてそれは、若い方はもちろん、どんなに年齢を重ねた方についてもいえることです。

「新しく発見すること」を面倒だと感じたり、煩わしく思うようになったりしたら、あらゆる成長が止まってしまいます。靴がきれいだから、行動的になれる。行動的になるから、新しい発見も増える。その結果、自分が成長できる。毎日の刺激がちょっと足りないと思っている方は、靴磨きをスイッチにして、新しい場所へ出掛けてみてはいかがでしょうか。

ただ靴を磨くだけでこんなにもいいことが得られます。足元が変わり、習慣が変わり、自分が変わり、そして人生が変わることを楽しんで実感していただけたらうれしいです。靴磨きをしたことがない人は、ぜひ今日から靴磨きを始めてみてください。最初は方法にこだわる必要はありません。軽くホコリを取ったり、固く絞った布で水拭きしてみたりでもいいです。社会に踏み出す足は、きれいに磨かれているに越したことはありません。靴とは「いい場所に連れていってくれるもの」なのです。

長谷川裕也(はせがわ・ゆうや)
靴磨き職人1984年、千葉県出身。靴磨き専門店Brift H(ブリフトアッシュ)代表。2004年20歳のときに丸の内の路上で「靴磨き」を始める。約1年後、品川駅前の路上へ移るころには、行列のできる靴磨き屋として有名に。2008年6月、南青山にカウンタースタイルの靴磨き専門店、Brift Hを開店。2017年5月、イギリス・ロンドンで行われた「ワールドチャンピオンシップ・オブ・シューシャイニング(靴磨き世界大会)」で優勝し、「靴磨き世界一」の称号を得る。『自分が変わる靴磨きの習慣』(ポプラ社)は初の「靴磨き系自己啓発書」。近著に『靴磨きの本』(亜紀書房)がある。
(撮影=吉次史成)
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