KDDI子会社化、最大のメリット

【田原】いまいなくても、IoTが盛り上がっているから、そろそろ他社が参入してくるんじゃないですか。

【玉川】先ほど、普通の通信会社がデータセンターのハードウェアで処理しているところを私たちはソフトウェアでやっていると説明しました。さらっと言いましたが、じつはソフトの難易度が非常に高く、追随するのは難しいと思っています。

【田原】新聞報道によると、ソラコムをKDDIが約200億円で買収したそうですね。KDDIがソラコムを買収したのは、いまおっしゃったような技術力を高く評価したからなのでしょう。一方、玉川さんはどうして大企業のグループ入りしたの?

【玉川】私たちはベンチャー企業なので、多額の資金調達をして一気に成長するというスタイルでやってきました。すでに37億円を調達して、これからさらに1歩踏み出したいというときに、通信事業者と組めば資金、技術両方で得るものが大きいと考えて、グループ入りを決めました。

【田原】資金調達だけなら、上場してもいいわけでしょ。

【玉川】私たちは通信のハードウェアを持っていない仮想通信事業者です。今後、新しい通信規格が登場して、それをいち早く採用してサービス化するとき、ハードウェア資産を持っている通信事業者と組むことは大きなアドバンテージになります。また、私たちはグローバルなプラットフォームを目指していますが、その点でも国際電話をルーツに持つKDDIと組むことに魅力を感じました。

【田原】最後に、これからの展望を教えてください。狙いは世界ですか。

【玉川】すでにアメリカとヨーロッパにはオフィスがあります。もちろんアジアもやりたい。とくに中国はメーカームーブメントが起きていて、ものづくりの会社が続々と誕生しているのでおもしろい。積極的に展開して、グローバルなプラットフォームに育てたいと考えています。

玉川さんから田原さんへの質問

Q.経営者は何を学ぶべきですか?

先日、京大の山中伸弥さんを取材しました。山中さんは米国に留学中、教授に「VWを大事にしろ」と教わったそうです。教授が運転するフォルクスワーゲン(VW)のことだと思ったら、「VWはビジョン(Vision)とワークハード(Work Hard)」。山中さんはこの言葉に勇気づけられ、当時みんなに笑われながらiPS細胞を研究したそうです。自分にビジョンがある証拠なのだから気にする必要はないというわけです。

日本人は与えられた目標に向かってハードワークするのは得意ですがビジョンを描くのは不得意。とくに政治家や経営者にはビジョンが必要です。大きな仕事をするには、勉強以前に、ビジョンを打ち立てることが大切です。

田原総一朗の遺言:勉強の前に、まずビジョンを描け!

(構成=村上 敬 撮影=枦木 功)
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