2期連続の赤字で「志」の大事さを知る
2001年、韓国で見つけたオシャレで安価なメガネをヒントに「JINS」を立ち上げると、事業は順調に成長しました。06年には上場、会社にはまとまったキャッシュが入ってきました。ところがその後、2期連続で赤字を出してしまうのです。そうした浮き沈みから学んだのは、起業して成功するには、「ビジョンや志がないとダメだ」ということです。
「木」でたとえると、ビジョンや志は「根っこ」の部分になります。本当は商売を始める前に考えなければなりませんが、これがなかなか難しい。一般的に、商売を始めるときは
「果実」、つまり商品やサービスのことをまず最初に考えますよね。JINSでいったらメガネです。他社がメガネを1本3万円で売っているところ、5000円で売れば勝てる、他社が1週間後のお渡しなら即日渡しにすれば勝てる、私はそんなふうに考えました。
次に「枝葉」、すなわち戦術を考えました。JINSは「メガネをファッションにする」と謳って老舗メガネメーカーとの差別化を図り、それが功を奏したのです。しかし、時代が変われば同じ戦術は通用しなくなります。低価格のメガネ市場にも、ほかのプレーヤーが続々参入してきました。上場後に赤字を出したのは、このタイミングです。
そのとき必要だったものは、戦略です。木でいえば、「幹」にあたります。転機はファーストリテイリングの柳井正会長にお会いしたこと。会社の存在意義を問われて、私はうまく答えられませんでした。けれども、のちに「メガネをかけるすべての人によく見える×よく魅せるメガネを市場最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」という戦略を当時掲げることになり、軽量メガネの「Airframe」やパソコン用メガネ「JINS PC(現JINS SCREEN)」などのヒット商品を世に送り出すことができました。