漫然とサラリーマンを続けるだけでは「億万長者」にはなれない。雑誌「プレジデント」(2017年8月14日号)の特集「億万長者入門」では、5つの方法で富を手に入れた5人にそれぞれの方法論を聞いた。第5回は作家の藤原敬之氏が語る「外資へ転職」の極意について――。

運とコネとしたたかさで競争を勝ち抜く

金融業界に身を置き、ファンドマネージャーをしていたとき、30代半ばでクレディ・スイスからヘッドハントされました。当時の年収は、勤めていた野村投資顧問では課長待遇で約1300万円。クレディ・スイスではベースのサラリーとして倍の約2600万円に加え、実績に応じてのボーナスが上乗せされました。

作家 藤原敬之氏

担当した200億円の日本株ファンドを4年で2200億円まで拡大させるなど、実績を重ねたので収入は倍々ゲームで上昇。40歳で外資系での役員にあたるマネージング・ディレクター(MD)に昇格し、最終的にはプロ野球のレギュラークラスぐらいの年収をいただきました。

このときの年収は、日本の一流企業では社長にでもならない限りもらえない金額でしょう。事実上給与に上限がないといっていい外資系企業の役員は、億万長者になる手段としては確かにアリだとは思います。

ただし、実現するのは至難の業です。先ほど年収はプロ野球選手並みと言いましたが、レギュラーになれるのは年間100人程度の狭き門です。外資系での日本人役員は、倍率や難易度という点ではそれ以上ではないかと思います。

プロパーからの役員昇格はかなり難しい

外資系で役員になるためには、大きく2通りのルートがあります。1つは、外資系企業にプロパー社員として採用されて、その後出世を重ねるケース。もう1つは、日本の会社で実績を上げ、ヘッドハントされるケースです。私の場合、転職時はディレクターとして採用され、入社後にMDに昇格したので、その中間、どちらかといえば後者寄りです。

そして、実際にも後者のケースがほとんどです。新卒から外資系に入社して、そのまま役員に昇格するという人は非常に稀。というのも、外資系は日本企業のようにピラミッド構造になっていないからです。「ライン」と言われる、ボスを頂点とした縦割りの部門があって、ボスの立ち位置によってその部下の人事も大きく動きます。

仕えたボスがトップに就いて、自分が評価されていれば引き上げてもらえるけれども、そうでなければどんなに優秀でも、幹部になることは決してありません。これははっきり言って運です。そして、外資系は実力主義と思われがちですが、実際は日本企業以上に個人同士のコネやつながりがものを言う世界。だからこそ、手っ取り早いのは最初からラインのトップとして入るか、もしくはトップのすぐ下のポジションで入社することなのです。

ちなみに私を誘ってくれたヘッドハンターは、何百人も日本企業から外資系へ移籍させた凄腕だったのですが、転職後に役員までステップアップしたのは、私を含めて3人しかいなかったそうです。外資系における日本人の評価をシビアに表していると思います。