距離の遠近で大小(順序)関係が決まる

次に第2文だが、「A社のB課長」「部下のC」「昨日」の3つは新しい情報であり、第1文の話題との間で距離が生まれる。そこで技術(1)を適用し、4つの言葉のなかで、第1文の話題に最も近い情報を探す。すると「その資料」は、第1文に既出している同じもので、最も近い。従って、第2文の最初には「その資料」を持ってくる。

この段階で、「いま、私は、A社の資料を読んでいます。その資料は、A社のB課長から、部下のCが、昨日、送ってもらったものです」となる(日本語として自然になるように、少し直している)。

そして、技術(2)を適用する。第1文の「私」はこの文章の書き手自身であり、「いま、私は」ではなく、「私は、いま」の順序にする。第2文の「A社のB課長」と「部下のC」は、書き手の私から見て、「部下のC」のほうが「B課長」より近い距離におり、「部下のCが、A社のB課長から」とする。

以上をすべて適用すると、「私は、いま、A社の資料を読んでいます。その資料は、部下のCが、A社のB課長から、昨日、送ってもらったものです」となる。第1文と第2文が滑らかにつながり、さらに各文のなかも読みやすくなったのではないだろうか。

今回のように数学的なものの考え方は、具体的な数値がなくても、2つの距離の遠近という大小(順序)関係が決まるだけで、いろいろと役立てられるのだ。

(構成=田之上 信)
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