産経は社説ではなく1面コラムで指摘

興味深いのは産経社説の対応である。これまで韓国が慰安婦問題で日本を攻撃するたびに非難してきたにもかかわらず、東京新聞と同様に触れていない。

どうしたのだろうか。疑問に感じながら1面左下のコラム「産経抄」をのぞくと、ここで触れていた。

「北朝鮮に核放棄を迫るため、日米韓が結束して最大限の圧力をかける。それを確認するトランプ氏のアジア歴訪の最中に、なぜ日本との『紛争の種』を披露する必要があるのか。就任以来目立った成果があがっていない文政権が、反日姿勢を国民にアピールする場として利用したとしか思えない」

産経抄はこう皮肉っているが、社説で書くべき内容だったのではないか。産経抄も社説と同じく論説委員が担当しているらしい。論説委員の会議で社説と産経抄の内容を振り分けたのだろうか。産経抄は以前、石井英夫氏という敏腕記者が担当していた。だが、最近はかなり質が落ちたと感じる。残念だ。

(産経は10日付の2番手の社説で「韓国の晩餐会」というタイトルに「愚かさにも限度があろう」と見出しを付けて批判している。それにしてもどうして出遅れたのだろうか)

「我々を試すな」と見下す

トランプ氏の講演内容について、11月9日付の読売社説はおおむね好意的だ。見出しは「『北』の孤立化で強固な結束を」である。

冒頭から「北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するには、国際社会が一体となって、最大限の圧力を加えることが欠かせない。時宜に適ったメッセージが発せられたと言えよう」とトランプ氏を持ち上げる。

安倍晋三首相と蜜月関係のトランプ氏を褒める。「安倍政権の御用新聞」と左派から批判されるだけある。

さらに読売社説は「中国とロシアを名指しして、北朝鮮との貿易や技術協力の断絶を求めた意義は小さくない」とも評価する。そのうえで「朝鮮半島周辺に米空母3隻や戦闘機F35、原子力潜水艦が展開している現状を説明し、『力による平和を求める』とも断言した。米国の都市を破壊できる核ミサイル開発を容認しない姿勢を強調し、『我々を試すな』と警告した」と書く。

まさに軍事力で北朝鮮を黙らせようとするトランプ氏の本質だ。しかも「我々を試すな」と北朝鮮を見下している。

圧力の強化だけで事態が解決するか

続けて読売社説は「トランプ氏は9月の国連演説で北朝鮮の『壊滅』に言及し、金正恩朝鮮労働党委員長を『ロケットマン』と揶揄したが、今回は過激な表現を抑えた。対話解決の道も残されていると呼びかけた。北朝鮮に『核ミサイルで米国の攻撃を抑止する』との政策を転換させ、非核化と弾道ミサイル開発放棄の交渉テーブルに着かせる。それが、圧力強化の目的であることを明示したのは評価できる」と書いている。

果たして圧力の強化ぐらいで北朝鮮が交渉のテーブルに着くだろうか。自らの独裁のためには手練手管の限りを尽くすのが、金正恩・朝鮮労働党委員長である。 だからといって、これまでのようなトランプ氏の攻撃的なやり方では、核戦争も引き起こしかねない。そうなれば日本の被害は甚大だ。