お茶の道のプロが聞いたらひっくり返ってしまうような話だろうが、多くの人にお茶の味などわからないのだから仕方がない。

もし、私の執務室に、お茶の道の師匠やその道のプロがやってきたら、何を出すべきだろうか。

ズバリ、水道水である。

お茶の道に通じている人間に、お茶などもってのほか。お茶でなくて紅茶やコーヒーであっても、きっとその鍛えられた舌で、安物であったり、インスタントであったりすることがバレる可能性があるからだ。ミネラルウオーターも安い高い、軟水硬水があったりして煩わしい。

「私は質素にやっています。だから美味しくないことがわかっていても水道水を出すことにしています」

と胸を張るぐらいにして、水道水を美味しそうに飲む。このようにその道の専門家がでてきたら、競う価値観を変えることが大事だ(笑)。

にわかワイン通にすぐなれます

ライバルがポルシェやフェラーリなどのクルマに乗っているのなら、

「私は環境を大切にしていますから、当然愛車はプリウスですね。当たり前です。外車はエコでないことも多いですからね」

と言い張ることが大事なのだ。一時が万事で、これはビジネスの世界にも通じる知恵比べなのである。

それにしても日本人は、なぜあんなにワインについてシタリ顔で話すのだろう。私には訳がわからない。

試しに、ワイン自慢の人に目隠しをして、「飲んだワインを高い順に並べてみろ」と言ったとして、ほとんどの人は正解など答えられるわけがない。私は、これまでの仕事人生で酒をほとんど断ってきたのだが、アルコールの入っていない冷静な状態で、ワイン自慢の人間を観察していてあることに気づいた。彼らのワインの感想は概ね2つしかないということである。

「フルーティで飲みやすい」
「ガツンときて濃厚な味わい」

この2つしかほとんど言っていない。あとは飲んだワインの銘柄(「A」としよう)と、前に飲んだと主張する高級有名ワインの銘柄(「B」としよう)を並べてこう言うのだ。

「この前飲んだBと比べて、こちらのAのほうが、なんというか、僕は好きです」

私は、今後ワインを飲む機会があったら、この紹介した3つの言葉を使ってみようと思う。