――ゴールドマン・サックス証券を辞めて、ライフネット生命に入ろうと思った経緯・理由を教えてください。

【森】ライフネット生命に入ったのは5年前、28歳の時です。畑違いのように思われますが、証券会社にいた時は、保険会社向けにM&Aや資金調達の財務のアドバイスをする部門にいました。つまり、保険会社がお客さまだったわけです。東京オフィスで4年間、ニューヨークで1年間働いたのですが、常に保険会社の経営陣や経営企画部の方がカウンターパートにいたので、保険業界の構造や各保険会社の事業モデルなどを理解する機会に恵まれていました。

また、東京オフィスにいた時には隣のプロジェクトチームが、ライフネット生命の上場案件を手掛けていました。それで、ニューヨークに転勤後、ライフネット生命について、私がゴールドマンの現地の同僚に説明をするという機会があって、その時に初めてこの会社について調べたんです。その際、会社のミッションやビジョンがとてもいいなと感じました。

一方で新しいことを進めていくうえでいろいろと大変な局面もあるだろうな、と。この業界の歴史や困難については自分なりに分かっているつもりでしたから。しかし、先ほど申しましたように、ミッションとかビジョンは素晴らしい。それを実現するために、じゃあ自分が何か役に立てないかと思い、ライフネット生命の中途採用に応募しようと決めました。

相変わらず無茶なことをやらせるなと思った

――取締役に、と声をかけられた時の気持ちと、今後の意気込みをお聞かせください。

【森】相変わらず、無茶なことをさせるなと(笑)。年齢的に若い役員ということで、外からの見え方でネガティブな面が本当にないのか、という心配はありました。でも小さな会社なので、自分で決められる部分が多いのは大きな魅力です。自分に自信がある分野で会社に貢献していきたいという思いを強く感じました。また、この会社には、私のように「子育て世代を応援する」という経営理念に共感して入ってくる社員が多いこともあり、「ファミリーディ」という家族同席のイベントを毎年開催しています。家族同士で会う機会も多く、社員一人ひとりに「仕事の顔」と「家庭の顔」のギャップがない会社だな、というのは新鮮な驚きでした。

――最後に出口さんについて、見習いたい点とそうでない点を。

【森】すごいなと思う点は軸がブレないところです。この会社も10年間、ずっと順風満帆だったわけではなく、山あり谷ありだったわけで、「考え方を変えた方がいいのでは」という意見も社内外から出てきます。小さくまとまる誘惑に駆られることもあったと思いますが、それでもブレずにやり続けるのはすごいことで、見習いたいと強く思う点です。

一方、彼は「悔いなし、遺産なし」を座右の銘としていて、「悔いなし」は私もそうしたいと思うのですが、「遺産なし」というのは……。基本的に使い切るんですね、「人・本・旅」に。その点は私にはなかなか見習えないかもしれません(笑)。

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険創業者。1948年、三重県生まれ。京都大学卒業。日本生命ロンドン現地法人社長、国際業務部長、ライフネット生命社長・会長などを歴任。
森亮介(もり・りょうすけ)
ライフネット生命保険取締役。営業本部長。1984年、愛知県生まれ。京都大学法学部卒業。ゴールドマン・サックス証券を経て2012年入社。2017年営業本部長。2017年6月より現職。
(構成=八村晃代 撮影=慎 芝賢)
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