郊外に住むことは「ありえない」
子どもたちが働けない辛さは変わらないものの、和田氏にとって嬉しい状況変化もあった。いずれ自宅を処分して、介護サービス付きのシニアマンションに移るしかないと考えていたが、子どもたちは「自宅でお父さんの老後の世話をするから、絶対に家を住み替えないでほしい」と頼み、あきらめていた介護や看取りまでしてくれると言ってくれたことだという。
子どもに老後を救われたのは、埼玉県在住の川崎和夫氏(仮名・62歳)だ。川崎氏は41歳で会社勤めを辞めて独立。夫婦で家具・インテリアの輸入販売を手がけ、一時は羽振りもよかった。が、リーマンショックの影響で仕事は行き詰まり、自己破産した。
「その後は清掃関係の仕事に就いて、月に15万円稼いでいました。年金は厚生年金の一部がやっと支給されるようになったところです。女房も近くのスーパーで月10万円のパートに出ていました。元モデルだった浪費家の妻の見栄で、家賃15万円のマンションに住み、私の稼ぎは家賃に全部消えちゃいましたね。預貯金も100万円を切る程度しかありません」
同居に賛成してくれた娘婿には感謝
奥さんは自己破産したうえにマンションを引き払えば親戚や友人から「家賃も払えないのか」と思われるのが嫌で、転居に強く反対していたという。
「娘が私たちの貯金が底をつくことを心配して、昨年から同居してくれています。都内は無理なので埼玉県に家を買ったんです。娘夫婦は共稼ぎで、子どもを産む予定はまだ先だったようですが、それを『孫の世話のために娘のところへ引っ越す』という妻の大義名分が立つようにと、早めに子どもをつくることにしたようです」
無事に赤ちゃんも生まれ、娘にはもちろん、同居に賛成してくれた娘婿には感謝してもし切れない思いだという。家賃のために働いてきたような川崎氏だったが、奥さんと娘家族に囲まれて過ごすことになり、胸をなでおろしている。今後はアルバイトの稼ぎや年金の中から、娘夫婦に多少は生活費を渡し、なるべく負担をかけないようにしたいと話す。