使用許可を求めたら「診断書」を要求される

学校側に「子どもの目を守ろう」との意識が希薄な状況下でサングラスの使用許可を得ようとすると、大変な労力を伴う。それを象徴しているのが、長野県内の公立中学校へ娘を通わせている自営業の伊藤一彦さんのケースだ(詳細は伊藤さんがブログにまとめている)。

伊藤さんがサングラスの使用許可を得ようと思い立ったのは、テニス部の練習で直射日光を浴び続けた娘の目が真っ赤に腫れ上がったからだ。部の顧問に相談したところ、「どうせカッコつけたいんだろ」「試合の相手に失礼」「駄目と規則で決まっている」などと言われ、取り付く島がなかった。

伊藤さんは学校を相手にしていてもらちが明かないと判断、市の教育委員会に直訴した。すると学校側から連絡が入り「善処したいが、医師の診断書が必要」と言われた。最後には県の教育委員会に直訴し、ようやくサングラスの使用許可を得られた。ただし「今回は特例」と念を押されたという。

「原因は『オシャレ』ではないか」

特例であれば、70~80人の部員の中でサングラス姿は伊藤さんの娘だけになる。当然ながら目立つ。結局、周囲の目を気にするあまりサングラスの着用をためらいがちになり、ついには部活への熱意も失ってしまったという。伊藤さんは「部員全員にサングラスを認めてくれればこうはならなかったに」と今でも残念に思っている。

伊藤さんのケースは決して例外ではない。部活動の行き過ぎなど「学校リスク」を研究し、著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社)などがある名古屋大学大学院准教授の内田良氏は「部活動で子どもの健康を第一に考えていない学校は多い」と指摘する。

「帽子はともかく日焼け止めやサングラスとなると、いちいち文書を出して許可を取らなければ使用できなくなる。ゴーグルやラッシュガード、サポーターなどでも問題の根っこは同じ。子どもの健康を優先すべきだというのに、前例を踏襲しているだけで思考停止になっている。そもそも『許可』にどんな根拠があるのでしょうか」

なぜ学校側は抵抗するのか。内田氏は「原因は『オシャレ』ではないか」とみている。日焼け止めは一種の化粧品であり、サングラスはファッションであるから、教育の場にはふさわしくない――こんなロジックがあるというのだ。同氏によれば、部活動で日焼け止めを禁止している学校もあるという。