その証左が、全国市長会が、4月12日に厚労相に対して、「国民不在の新専門医制度を危惧し、迅速に進めることに反対する緊急要望」を提出した際の国立大学医学部長会議の対応だ。記者会見を開き、全国市長会に抗議文書を送付したことを公表した。医学部長たちは、この全国市長会の提言に対して、「重大な事実誤認がある。看過できない」と反論している。
全国市長会は、新専門医制度の問題点に関する文書を、検討会を主宰する厚労相に送ったのに、国立大学医学部長会議は全国市長会を批判するため記者会見まで開いた。社会に説明したり、検討会に意見書を送ったりするのならわかるが、これは滅茶苦茶だ。機構と医学部長たちが「お仲間」であると自白しているようなものだからだ。
持ちつ持たれつの医療業界
では、彼らは世間の大反発を受けながら、どうして新専門医制度を強行しようとするのだろう。色んな理屈をつけているが、本音はカネだろう。
機構の決算報告書によれば、平成29年3月末日現在、総資産は7142万円で、総負債は2億1305万円。1億4163万円の債務超過だ。前年より7387万円増えた。
機構は運転資金を得るため、短期で3000万円、長期で1億4304万円を借り入れている。
借入先は、日本医師会5000万円、日本内科学会2280万円、日本外科学会894万円などだ。全国医学部長病院長会議も50万円を貸し付けている。
このような団体は機構と「運命共同体」である。一刻も早く機構が業務を開始し、審査料という名目で収入を得ないと、彼らも貸した金が返ってこない。
なぜこんなことになったのだろう。機構の本務は学会のプログラムの審査だ。事業開始前に関係者が会うだけなら、億単位の借金はつくらない。
決算報告書をみて驚いた。人材派遣費3360万円、旅費交通費に3745万円。賃料に1555万円、会議費1188万円も支払っている。
事務所は有楽町の東京フォーラムに借りている。賃料は坪12万6421円だ。大手町のオフィスの平均賃料ですら坪約4~5万円程度だ。銀座なら2万円台だ。随分と浪費したものだ。
呆れた「一面カラー広告」
ところが、これは医学界の重鎮の間では珍しいことではない。学会の運営費は会員からの会費。身銭を切るわけでなく、大判ぶるまいしがちだ。使途を厳しく問われることはない。これは機構に限った話ではない。
例えば、日本脳神経外科学会のケースだ。嘉山孝正理事長は、新専門医制度をリードしたことで知られている。
7月5日と6日、日本脳神経外科学会は、全国紙の一面を使い「日本脳神経外科学会専門医制度創設50周年祝賀会」というカラー広告を打った。嘉山理事長以下、幹部4人の顔写真を添えたコメントとともに、祝賀会での記念撮影の写真が大きく紹介された。