スタンスの違いをもとに検証するのはおかしい

他紙の社説に対してはどうか。まずスタンスが同じ読売の社説。「『言葉通りの行動を求めたい』と、やはり肯定的に捉えた読売は、『公明党から憲法改正への慎重論が高まる可能性もある』『公明党とも積極的に議論し、与党の合意を丁寧に形成することが重要だ』と憲法論議の活性化を促した」と書く。

スタンスが異なる朝日や毎日の社説に対しては「首相の『反省』に冷ややかな見方を示したのが朝日と毎日だ。朝日は『首相自身の強権的な体質を反省し、改められるかどうかが問われている』とし、毎日も惨敗の責任を深くかみしめているのか、疑問を抱く』と不信感を隠さない。毎日はまた『首相は《人づくり革命》を掲げるが、それを跳躍台に憲法改正につなげる狙いがあるのではないか。今回はそのすり替えは通用しない』と牽制した」と書く。

スタンスの違いをベースに検証するのは、読み手として納得がいかない。

どの社も触れない「初の女性首相」

さらに「朝日、毎日、東京はいずれも臨時国会の速やかな開催を求めた」と述べ、さらには『小池都政』への言及では各紙に共通する部分が多い。知事は告示直前に『豊洲移転、築地再開発』を発表したが、『財源の詳細な根拠や具体的な築地活用計画は小池氏も《都民》も語っていない。早急に今後の青写真を」(産経)、『2つの市場機能をどう併存させるのか、詳細は語っていない。具体的な計画や収支見通しを早期に提示する必要がある』(読売)。朝日も知事の『具体的な成果』は乏しいという」と続ける。

また「支持基盤を固めた小池氏支持勢力については『新たな知事与党が小池都政を追認するだけになれば、都庁の情報公開は進まない。知事と議会の間には健全な緊張関係が必要だ』(毎日)、『議会が唯々諾々と知事に追従し、チェック機能を失っては元も子もない』(東京)。読売も同様の懸念を示している」とも述べる。

以上、産経の「社説検証」とタイトルが付けられた7月5日付の記事を検証してきたが、この産経の検証では大きな点が欠けている。それは小池百合子都知事が新党を結成して国政に転じ、首相、つまり内閣総理大臣を目指す決意をするかどうかについてどの新聞社説も取り上げていないという点への検証である。

政界の魔物たちが狙うポスト安倍

7月4日付の「プレジデントオンライン」で筆者の沙鴎一歩は「『国のリーダーはどうあるべきか』を常に考えながら行動する政治家、小池氏の本心は『初の女性首相』にある」と書いた。

国政に大きな影響を与える都議選で、あれだけの票数を得た小池氏にとっていまの勢いを逃したら後はもうないだろうし、小池氏の周辺が放っておくはずもない。

小池氏自身はこの初の女性首相について言葉を濁しているが、それは当然だ。「築地移転やオリンピック開催など大型プロジェクトを抱える都政運営の舵取りを都知事としてしっかり進める」のが、彼女のいまの仕事だからである。しかし、政治の世界は魔物の住む世界である。

都議選で自民党が大敗したことで、安倍晋三首相の後継を狙う魔物たちの動きが活発になっている。一方で小池氏の「都民ファーストの会」の代表辞任、都民ファーストの活動を全国に広げようとする「日本(国民)ファーストの会」結成のささやき……もある。

こうしたさまざまな動きを小池氏がどう見てどう動くか。当分、目が離せない状況が続く。

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