トランプ大統領の弾劾につながるか
任期を6年も残してコミー氏を解任したトランプ氏の行為そのものを「トランプ氏の周辺に降りかかる疑惑を封じ込めることが目的なら、言語道断だろう」と読売社説は批判、さらに「FBIの独立性が脅かされることを(コミー氏が)『非常に懸念した』と語ったのは理解できる」「偽証すれば罪に問われる場で、コミー氏が『告発』した意味は重いと言えよう」とコミー氏を擁護する。
これも十分納得できる主張である。民主主義は一個人の利益を守るためのものではないからだ。もちろん読売社説は「トランプ氏は、捜査中の圧力について、『そんなことは言わなかった』と反論した」とトランプ氏の反論もきちんと書いている。
ロシアが大統領選でトランプ陣営を共謀してサイバー攻撃で介入したのか。トランプ陣営は対露制裁解除を密約したのか。これが「ウォーターゲート事件」をもじって名付けられた「ロシアゲート疑惑」である。
読売社説がその後半で述べているように今後の焦点は、トランプ氏の言動が大統領弾劾につながる「司法妨害」に相当するかどうかだ。特別検察官の捜査できちんと解明すべきだ。それが民主主義国家だ。
読売の新聞人として自覚はどこへ
それにしても加計学園問題で安倍政権擁護の姿勢を、論を展開しながら巧みに貫く読売新聞の社説は、ロシアゲート疑惑では実にまっとうな主張を繰り返している。権力を監視する。これが新聞の本当の姿勢だ。
しかしながら最高幹部らが安倍晋三首相とあまりにも親しいと、新聞人としての自覚まで失ってしまう。その結果、「もりそば・かけそば疑惑」の報道が歪められたといっても過言ではないだろう。読売新聞よ、新聞人としての自覚を取り戻してほしい。保守色が強く、同じく安倍政権を擁護する産経新聞にも同様のことを言いたい。
その産経社説(6月11日付)も、ロシアゲートに関してはまっとうな主張を展開する。たとえばこうである。
「唐突な解任以降の状況は、それ自体、司法の独立性が損なわれたのかという強い不信感を醸成している」「国民の疑心を拭い、国政の停滞を避けるうえで、この問題の究明を急ぐしかあるまい」「米国の民主主義を根底から揺るがす可能性を秘めている問題といえよう」「国際社会にとっても看過できない問題である」
なるほど。どの主張も「おっしゃる通り」とうなずけよう。直接、安倍政権がからんでないので産経新聞の論説委員も書きやすいのだと思う。