「不毛な論戦」と批判する産経社説

次に産経新聞の社説。前述した読売社説と同じ27日付である。ちなみに産経の場合は社説ではなく、「主張」というタイトルを付けている。

「不毛な泥仕合は見苦しい」との見出しを付け、「まるで泥仕合であり、見苦しくさえある」と書き出す。一見、加計学園の問題を公平中立に書いているように受け取れるが、要は野党と政府与党の争いを止めろと強調しているのに過ぎない。社説中の言葉を借りれば、「野党は前川氏の国会招致を求め、政府側からは前川氏に対する個人攻撃が聞こえてくる。不毛な論戦であるとしか、いいようがない」から止めなさいと忠告しているのだ。

さらに産経社説を読み進めていくと、「加計学園の理事長が安倍晋三首相の友人である個人的関係が許認可に影響を与えたかが疑惑の核心なのだろう。だが文書が存在したとして、首相およびその周辺から具体的指示があったかの証明とはならず、法律上の容疑が生じるわけでもない」と断言する。

「法律上の容疑が生じるわけでもない」

しかし「法律上の容疑が生じるわけでもない」とまで言い切る根拠はどこにあるのだろうか。ロッキード事件やリクルート事件を立件した検察がじっと観察していることを忘れているのではないか。

さらに「推進の指示があったとしても規制改革は政権の重要政策であり、不自然とはいえない。忖度の有無が焦点となれば、これはもう水掛け論である」と指摘し、「前川氏は会見で『公平、公正であるべき行政のあり方がゆがめられた』と述べたが、事実なら自身の在職中に対処すべきであり、あまりに情けないではないか」と述べる。これも読売社説と同じである。

産経新聞は27日付1面に「混迷文科省 前次官“告発”」というタイトルの企画(上)を掲載している。その企画の主見出しが「義憤の顔は本物か」である。

企画の終盤は「前川は昨秋、『出会い系バー』への出入りについて官房副長官の杉田和博から注意を受けた。今年1月には文科省の組織的天下り問題を受けて引責辞任。こうした経緯から、告発は義憤ではなく政権への意趣返しなのではないか、との見方も出た」と綴られている。

企画としての切り口はおもしろいかもしれない。だが安倍政権擁護が先にあるような気がしてならない。これも読売新聞と同じである。

(写真=Rod Walters/アフロ)
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